本研究では,最大努力での加速疾走中に発揮したパワーの発揮特性とトーイングマシンを用いた牽引走時の走パワー発揮特性を比較し,牽引走によるオーバースピードトレーニングが走パワー発揮能力に及ぼす影響を明らかにすることを目的として研究を実施した。研究全体として,研究実施計画を部分的に変更したものの,牽引走における牽引力や牽引方法が疾走に及ぼす影響に関して,下記の成果が得られた。まず,「トーイング走における牽引力が疾走に及ぼす影響」に関して,牽引力が3kgまたは5kgのトーイング走と最大努力での疾走時における疾走速度変化を比較した。得られた結果から,トーイング走は最大努力での疾走に比べて,自身の出しうる最大疾走速度近傍に早期に達し,その速度以上で疾走する区間が長くなっていたことがわかった。 また,本年度は「トーイング走における牽引方法の違いが疾走に及ぼす影響」に関して,測定実験と得られたデータの分析を行った。具体的には,牽引方法が異なるトーイング走(疾走の一部のみ牽引と疾走の一部始終牽引の2種)と最大努力での疾走時における疾走速度変化を比較した。その結果,牽引方法に関わらず,トーイング走は最大努力での疾走に比べて最大疾走速度が有意に大きかった。ただ,疾走の一部始終牽引したトーイング走では,最大疾走速度が他の試技に比べて有意に最も大きく,疾走の一部のみ牽引したトーイング走では,牽引が終わって以降も高まった疾走速度を緩やかに維持して疾走する傾向がみられた。これらのことから,トーイング走では牽引方法に関わらず,自身の最大努力での疾走と比べて,高い速度で長く疾走することが可能なものと考えられた。また,トレーニング目的に応じて,牽引方法を設定する必要があることが示唆された。これらの結果に関して,学会発表を行いながら,研究協力者との対面ミーティングを実施した。現在,論文投稿の準備を進めている。
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