研究課題/領域番号 |
20K19529
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研究機関 | 流通科学大学 |
研究代表者 |
内田 遼介 流通科学大学, 人間社会学部, 講師 (30589114)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | スポーツコーチング / 運動部活動 / スポーツ指導者 |
研究実績の概要 |
2020年度は,新型コロナウイルス感染症の感染拡大により,中心的な研究となるスポーツ指導場面の観察研究を中止した。代わりに,課題に関連する研究としてオンライン調査を実施した。この調査では,指導者-アスリート間の「信頼関係」という言葉に着目した。 スポーツ指導の現場において指導者が練習中におこなう様々な行為は,指導者-アスリート間の「信頼関係」という言葉のもと,非合理的,あるいは暴力的とも思えるような内容でも問題視されない傾向にある(南部, 2019)。しかし,当事者以外の人々からすると,指導者-アスリート間の「信頼関係」とは具体的に何を意味しているのか明確ではない。そこで,指導者-アスリート間の「信頼関係」の意味について探索的に明らかにすることを目的にオンライン調査を実施した。調査対象者は一般人494名で,指導者-アスリート間の「信頼関係」という言葉を聞いて何を思い浮かべるか,思いつくかぎり箇条書きで少なくとも3件,最大で6件回答するように求めた。その結果,1807件の箇条書きが得られ,女性と男性の間で「信頼関係」の意味に質的な違いが認められた。具体的に,女性は男性よりも「信頼関係」を肯定的に捉える一方で,男性は女性よりも否定的に捉える傾向が認められた。また,指導者-アスリート間の「信頼関係」から連想される特徴的な言葉として,女性では情緒的な意味合いを持つ言葉が確認された一方で,男性では指導内容に関わる言葉が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は,新型コロナウイルス感染症の感染拡大により,中心的な研究となるスポーツ指導場面の観察研究を中止した。代わりに,課題に関連する研究としてオンライン調査を行った。中心的な研究は実施できなかったが,本研究の最終的な目標である,グッドコーチ育成に資する教育プログラムに係るデータ収集ができたことからおおむね順調に研究が進んでいると考える。また,指導者-アスリート間の「信頼関係」を定量的に評価する際の有用な尺度として“Measurement Scale for Trust in Leader”(Dirks, 2000, J.Apll.Psychol., 85, 1004-1012.)を使用する準備を進めており,既に著者であるDirks博士から翻訳の許可を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度に実施したオンライン調査では,指導者-アスリート間の「信頼関係」の意味について箇条書きで回答を求めたが,それ以外にも,これからのスポーツ指導者に求められる資質や能力に関して自由記述で回答を求めている。このデータについては,2021年度の早い段階で分析を完了させ,「信頼関係」の意味に関する結果と併せて体育・スポーツ科学に関係する学術雑誌に投稿する予定である。中心的な研究であるスポーツ指導場面の観察研究については,新型コロナウイルス感染症の感染状況を見極めながら慎重に行う。いつでも観察研究が開始できるように,対象者の選定や実施方法について確認するとともに,観察研究が実施できなかった場合の代替研究についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度はスポーツ指導場面の観察研究を中止したことから,計画当初に予定していた一人称視点で指導の様子を記録できるウェアラブルデバイスの購入を見送った。その結果,購入に係る費用が2021年度に繰り越しとなった。繰り越し分については,観察研究を実施する際にウェアラブルデバイスの購入に充てる予定であるが,状況次第ではさらに翌年度に持ち越しとなる可能性もある。
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