研究課題/領域番号 |
20K19529
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研究機関 | 流通科学大学 |
研究代表者 |
内田 遼介 流通科学大学, 人間社会学部, 講師 (30589114)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | スポーツコーチング / 運動部活動 / スポーツ指導者 |
研究実績の概要 |
本年度は2件の調査研究を行った。第1に、青少年スポーツに携わる指導者の印象についてオンライン調査で検討した。この調査では、スポーツ少年団の監督や運動部活動の顧問といった青少年を指導する人のイメージとして何を思い浮かべるか、思いつく限り箇条書きで少なくとも3件、最大で6件回答を求めた。同時に各箇条書きに対する感情価として3段階(肯定的・どちらでもない・否定的)で評価させた。分析の結果、子どもを持たない人よりも、スポーツをする子どもを持つ親の方がスポーツ指導者に対して肯定的な印象を抱いていた。また、子どもを持たない人であっても平均的には肯定的な印象を抱いていることが明らかとなった。 第2に、指導者への信頼感と練習に対する効果性認知が関連するのか、オンライン調査で検討した。過去に行った調査では、アスリートが指導者を信頼しているほど練習が効果的であったと判断する傾向が認められており(内田他、2021)、今回は質問項目を見直したうえで改めて検討した。指導者への信頼感は、Dirks(2000)の作成した“Measurement Scale for Trust in Leader”を邦訳して使用した。練習に対する効果性認知は、最も厳しかった練習について自由記述で回答させた後、その練習が効果的であったか5つの観点から回答を求めた。また、その練習の性質(懲罰的・非懲罰的)にも回答を求めた。練習の効果性認知を従属変数とした重回帰分析を行った結果、指導者への信頼感と練習の性質の交互作用項が有意であった。指導者への信頼感が高く、かつ非懲罰的な練習時に、その練習が最も効果的であると認知していた。また、懲罰的な練習であっても、指導者への信頼感が高いほどその練習が効果的であると認知していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、グッドコーチ育成に資する教育プログラムの作成を目標として掲げていたが、この目標に関連するオンライン調査についてはおおむね完了した。また、得られたデータについては分析を行い、体育・スポーツ科学に関連する学会において発表した。したがって、現在のところおおむね順調に研究が進んでいると考える。今後は、指導者-アスリート間の対人関係に焦点化したデータをフィールドでの観察研究、または実験室実験を通して収集していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画ではグッドコーチに求められる対他者力(優れた指導者はどのように選手と円滑なコミュニケーションをとっているのか)を明らかにするため、指導者-アスリート間の対人関係について、アイトラッキングデバイスを用いた注視点の遷移分析とインタビュー調査から明らかにする予定であった。しかしながら、今後も協力団体が見つからないなど、当該研究が年度内に完了できない可能性も考えられる。したがって、対他者力の向上に資する知見を明らかにするという当初の研究目的は変更することなく、実験室内での代替研究の実施も視野に入れながら研究を進める予定である。具体的には、運動学習場面において学び手の注意を効果的に誘導する示範の提示方法や言葉がけについて、注視点の遷移分析から検討することを考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度中にフィールドでの観察研究が実施できなかったことから、当該研究で使用を予定していたアイトラッキングデバイスの購入を見送った。2022年度は、アイトラッキングデバイスを使ったフィールドでの観察研究、または実験室内での代替研究のいずれかを進める予定であることから、繰り越した予算を使って購入する予定である。
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