研究課題/領域番号 |
20K19529
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研究機関 | 流通科学大学 |
研究代表者 |
内田 遼介 流通科学大学, 人間社会学部, 准教授 (30589114)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | スポーツコーチング / 運動部活動 / スポーツ指導者 |
研究実績の概要 |
本年度はスポーツコーチングの現場に有益な教材の作成に取り組んだ。これまで選手―指導者間の信頼関係に関連する研究を3件行い、それぞれ分析が完了している。これらの分析結果を集約して選手―指導者間の信頼関係にみられる功罪両面について考える教材を作成した。具体的な内容としては、①一般人が抱く指導者に対する印象とこれからの指導者に期待する資質・能力、②選手―指導者間にみられる「信頼関係」という言葉の意味、③指導者に対する信頼感がトレーニングの効果性の認知に及ぼす影響の三部で構成した。最初に、一般の人々が青少年スポーツに携わる指導者に対して普段からどのような印象を抱いているのか、また一般の人々がこれからの指導者に期待する資質や能力とはどのようなものか説明した。次に、男性と女性では「信頼関係」という言葉を見聞きした際に連想されるイメージに違いが認められることを示し、それぞれに認められる特徴について説明した。最後に指導者への信頼感がトレーニングに対する効果性の認知に及ぼす影響に着目して行った調査結果から、たとえトレーニングが罰として科されたものであっても、指導者への信頼感が高ければそのトレーニングに効果を見出す傾向が認められるといった、選手―指導者間の信頼関係が有する望ましくない側面について説明した。なお、3点目の内容は2023年3月に日本体育大学で開催された日本コーチング学会第34回学会大会において発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請時の研究計画では対他者力(優れた指導者はどのように選手と円滑なコミュニケーションをとっているのか)の育成に資する知見を得たうえで、単一内容の教育プログラムで構成する予定であった。しかし、これまでの研究経過を踏まえ、教育プログラムを二部に分けて構成する方針に変更した。具体的に、第一部では選手―指導者間の信頼関係に着目して行った調査結果を中心に構成することとし、第二部では、対他者力に関する内容を中心に構成することとした。当初の研究計画では想定していなかった変更を行ったことで、最終的な成果物である教育プログラムの作成にやや遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
ここ数年の間に球技(特に硬式野球やゴルフ)を中心としたスポーツコーチングの現場で、即時的に身体動作やボールの軌道、道具の動きを正確に計測する機器を用いた付加的フィードバックの活用事例が散見されるようになってきている。一方、付加的フィードバックは、正確性や頻度、タイミングを適切にコントロールしないと運動スキルの習熟を妨げることが以前から指摘されている。次年度では、過去の研究で指摘されている付加的フィードバックの問題点や望ましい利用方法について、現代のスポーツコーチングの現場に則った方法(例えば、スマートフォンやパソコンを利用した身体動作の遅延再生フィードバックなど)を用いて改めて検証する。そして、得られた知見をもとに、スポーツコーチングの現場で活動する指導者の方々にも理解しやすい教材を作成する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画では対他者力を中心とした単一内容の教育プログラムで構成する予定であった。しかし、これまでに実施した調査の結果を効果的に教育プログラムに組み込むことを考えた場合に、教材を二部構成とした方が望ましいと判断した。この判断により、特に第二部の研究実施に遅れが生じている。本年度は第二部に関連する調査や実験を実施することから、データ収集に係る経費などに使用する予定である。
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