研究実績の概要 |
令和5年度は、幾何学的形態測定学に基づく相同モデルという新しい視点のアプローチで女子大学生の全身を評価すること、および体の「かたち」を形成する要因を抽出し、身体組成から捉えた女子大学生の体の「かたち」の特徴を明らかにすることであった。その結果、以下のことが明らかになった。 ①主成分分析の結果、個人差を表す体の「かたち」の90.8%を18個のPCによって説明され、PC1およびPC2で31.9%、PC12までで81.8%の体の「かたち」変化を説明した。 ②痩身体型や標準体型という区分にとらわれない様々な体の「かたち」が存在することが明らかとなった。特にNW群はPC1(寄与率17.5%: 胸部、臀部、大腿部の変化を表す因子)、UW群はPC2(寄与率14.4%: 胸部、臀部、腰部、上腕部の肥厚度を表す因子)の個人差が大きい特徴がみられた。OW群は、上腕部や腹部、臀部、大殿筋下部および下腿によって特徴づけられ、「かたち」の個人差が小さいことから、肥満体型は、「かたち」の個人差が現れづらいのかもしれない。 以上のことから、近年、世界的に運動不足やカロリーの過剰摂取から起こる肥満の問題について注目されており、過体重または肥満である成人の有病率は、世界人口の10-30%を占めている(Zhou et al., 2021)。肥満者の割合が全体の約3%である日本において、肥満に焦点を当てた健康対策のみならず、痩せに関する問題にも焦点を当てるべきである。現代の若年女性は,痩せの増加に加え、骨格筋量の減少も進んでおり、これに歯止めをかけるために、そして次世代の健康のために詳細な体の特徴を明らかにする重要性が示されたことは、令和5年度の成果である。 また、事業全体の成果としては、今日に至るまで、幾何学的形態計測に関する研究は、国内外を問わずなされているが、スポーツ科学や健康科学分野では申請者が知る限り、我々だけであり、さきがけの研究といえる。
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