骨折の多くは、橈骨遠位端など長骨骨幹端において発生する。しかし、これまでの動物実験では長骨骨幹部を用いた解析が一般的であった。骨幹端は血流が豊富なため、感染症など様々な影響が出やすい部位である。歯周病は血流を介して、全身に炎症を引き起こす慢性炎症疾患である。これまで歯周病が骨折治癒にどうのような影響を与えるか検討した報告はない。 スポーツ選手はスポーツドリンクの摂取機会が多く、歯周病の罹患率が高いことが報告されている。また競技中のアクシデントによって、腓骨遠位端など長骨骨幹端領域の骨折が多く発生するが、骨癒合しやすい部位であっても、治癒が遷延する症例が存在する。本研究ではこのような症例を想定し、歯周病モデルマウスを用いて、歯周病が骨幹端および骨幹部の治癒過程に与える影響について検討した。歯周病モデルマウスに対して、長骨骨幹端および骨幹部に骨損傷を作製し、骨折治癒過程への影響を確認した。歯周病自体が骨代謝に与える影響を確認するため、上顎第2大臼歯に糸を結紮し、歯周病モデルを作製し、脛骨および血清中の変化を検討した。本モデルでは、脛骨近位端の骨量減少は認められず、血清中のIL-6の上昇は見られなかった。歯周病モデルマウスの脛骨に骨損傷作製し、1日目から28日目の間に脛骨を採取し、マイクロCTおよび組織学的解析を行い、炎症期および仮骨形成期の変化を検討した。 歯周病モデルでは、7日目の段階で、両部位ともコントロール群と比較して、骨髄内の仮骨形成がわずかに減少していたが、有意な差は認められなかった。また14日目以降も、両群に差は認められなかった。
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