研究実績の概要 |
競泳競技で最も多い運動器障害は肩関節障害であり, その予防対策が求められている。 本研究の目的は水泳選手に多いスイマーズショルダーの発生メカニズムを筋協調性(筋シナジー)の観点から検討し, 障害予防プログラムの立案や治療の一助とすることである。競泳競技では肩関節だけでなく体幹や下肢を含む全身の筋協調性が必要となるが, これまでの研究においては肩関節のみに着目しており, 全身の各部位との関係や協調性の影響は明らかでない。 シナジー解析では筋協調性を評価することができ, 全身の協調運動が求められる競泳競技の評価においては非常に有益である。 当該年度は競泳選手20名を対象にバタフライ, 背泳ぎ, クロール泳時の筋シナジーをスイマーズショルダーの有無で比較した。スイマーズショルダーを有する選手の体幹部と上肢の協調性が乏しいことが明らかになった。 本課題より肩関節障害予防やリハビリテーションでは肩関節周囲のみならず肩甲骨周囲筋と体幹筋群との協調性の獲得を目的としたトレーニングを導入することが重要である。 今後は, 障害予防だけでなくパフォーマンス向上に必要な筋協調性を明らかにしたうえで, トレーニング, リハビリテーションに応用していく。筋シナジーを定期的にモニタリングすることで,今後は障害の有無による違いだけでなく, 選手間のパフォーマンスの違いや, 選手内の経時的変化(トレーニング・リハビリ効果)などの評価を予定している。スイマーズショルダー発生危険率の定量化の応用も検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度はバタフライ, 背泳ぎ, クロールの筋シナジーを明らかにし, 競泳競技における肩関節障害メカニズムを泳法別に検討することができた。体幹と肩甲骨周囲筋の筋シナジーを有することが肩関節障害の予防に必要であることが示唆され, 泳法別に必要となるリハビリテーションを提案することができた。また研究成果は現在、論文投稿中である。
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