研究実績の概要 |
サルコペニアは高齢化社会の日本にあって、その予防と対策は急務である。サルコペニアの診断には筋肉の量だけでなく、筋肉の質(以下、筋質)を簡便にかつ正確に測ることは重要であるが、現在はまだ筋質を評価する体系は確立されていない。他方、Phase Angle(以下、PhA)は生体電気インピーダンス法によって得られる生体の電気抵抗値から算出される値であり、導電組織である筋肉中の細胞機能の健康状態を反映すると考えられている。本研究は、高齢者と若年者を対象にPhAを比較調査し、年齢や運動習慣の違いによってPhAに差があることを明らかにする。さらに、PhAと筋肉内の超音波画像測定によって筋肉の評価を行うことで、筋肉内の状態の違いによるPhAの差を筋肉の質的な差として電気的に説明できることを立証する。また、筋肉内に存在する脂肪や線維組織によって影響を受ける糖代謝との関連も探る。本研究は、PhAをこれまでの測定方法では決定できなかった筋質を評価する体系として確立させ、サルコペニアの診断やさらなる研究の発展につなげるものである。 本研究は「研究① PhAが年齢などによって異なることの検証」および「研究② PhAを用いて筋質を評価するための調査と検証」を軸として行った。 近隣在住の一般高齢者および大学生を対象とし、京都医療センター倫理委員会の承認(高齢者:承認番号18-107、大学生:同18-106)を受けて測定を行い、大学生1,252名(18.4±0.6歳)および高齢者167名(73.7±6.1歳)の合計1,419名のPhAを算出した。BMIや骨格筋量指数、握力などの体組成や身体機能に関わるデータや、質問紙を用いた食事調査や運動習慣に関するデータとPhAとの関連を検討した。さらにPhAの上肢と下肢の値に着目し、上半身と下半身の加齢による衰えの進行速度の違いについて、その関連を検討した。
|