研究課題/領域番号 |
20K19565
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
島 孟留 群馬大学, 教育学部, 講師 (60846377)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 学習・記憶機能 / 2型糖尿病 / 乳酸 / 情動認知 |
研究実績の概要 |
学習・記憶機能の発揮・増強には海馬での乳酸利用が不可欠であるが、2型糖尿病では海馬の乳酸利用能が低いため、これが学習・記憶機能の低下の一因と想定される。2020年度は、海馬において乳酸輸送担体”MCT2”が低下しているob/obマウス(2型糖尿病モデル、Leptin欠損)の腹腔への乳酸単独投与(9.0 mg/kg/day、アシドーシスを誘発しない)、Leptin補充単独(0.1 mg/kg/day)、もしくは乳酸投与+Leptin補充が、学習・記憶機能を改善するかどうかを検討することで、2型糖尿病の海馬におけるMCT2の重要性とLeptinとの関係に迫った。その結果、Leptin補充単独により、ob/obマウスの学習・記憶機能が改善したものの、乳酸単独投与では改善がみられなかった。また、乳酸投与+Leptin補充による学習・記憶機能の改善はみられたものの、その効果はLeptin補充単独と同程度であった。これらのことから、海馬のMCT2発現量が低下している2型糖尿病への乳酸投与は学習・記憶機能を改善しない可能性が示され、2型糖尿病の認知機能を改善するためには海馬内MCT2発現の回復が先決の問題であると示唆された。加えて、Leptinは海馬の乳酸利用に影響しない可能性が示唆された。 また、脳の乳酸産生を促すような運動を日常的に行なっているヒトほど、他者の情動を認知する能力が長けている可能性も見出した。近年、情動認知能力が医療効果を左右することが示唆されているため、2型糖尿病の情動認知能力を高める習慣的な運動効果が確認されれば、医療効果を最大化する運動療法の開発につながるかもしれない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
COVID-19禍に伴い研究開始が遅れたものの、予定していた本年度の計画については実行できたため、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度中に、運動試験の環境整備が完了したことから、2型糖尿病の学習・記憶機能と海馬MCT2の回復を併行してもたらす低強度運動効果の分子基盤の解明に迫る。2020年度では、2型糖尿病の発症に関わるレプチンと乳酸利用の関係のみに迫ったが、2021年度では網羅的な解析を用いて、海馬 MCT2の増減に関わる分子を見出し、運動効果を基盤とした2型糖尿病を改善する最適処方の開発に貢献することを目指す。
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