研究課題/領域番号 |
20K19566
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大野 志郎 東京大学, 大学院情報学環・学際情報学府, 助教 (50708980)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | eスポーツ / ゲーム依存 / 健康 / 抑うつ / 縦断調査 |
研究実績の概要 |
本研究では、eスポーツの健康的使用(ヘルシーユース)のための科学的情報の収集を目的として、2波のオンラインパネル調査を行うものである。eスポーツは近年、世界的に市場規模を拡大させている。一方で、世界保健機関において採択された国際疾病分類であるICD-11でゲーム障害が新たに分類されるなど、ゲーム依存研究の文脈から様々なリスクの懸念が示されており、悪影響を最小限にするための健全な利用について、調査研究を行う必要性が指摘されている。本研究は、eスポーツの健全な利用のためのガイドライン策定のための情報を得ることを目的としたアンケート調査を実施し、身体的・精神的健康や社会的問題といった悪影響をもたらす要因、またそれらの悪影響を軽減させる可能性のある要因について、実証的に分析を行うものである。 今年度はeスポーツに関する状況や先行研究の調査を行った。eスポーツと健康に関する論文をレビューしたEmara et al.(2020)の報告によれば、eスポーツのアスリートは、ゲーミングチェアで長時間同じ姿勢をとり、長時間のスクリーンを見つめ、ゲーム中に何百もの反復操作を行うといったことから、ゲーマーネック、手と手首の痛み、代謝障害、深部静脈血栓症(DVT)など多くの健康リスクに晒されており、注意すべき健康リスクは多岐にわたる。一方で、チームでゲームを行うことによる向社会的側面に焦点を当てた研究は少なく、ポジティブな影響についても十分に論じられる必要がある。 今年度はCOVID-19パンデミックという不測の事態が生じたため、計画の変更を余儀なくされたが、パンデミックの収束状況なども見極めながら研究を継続し、チームワークを求められるゲームが、このような状況において人々の健康にどのような有用性を持つのかについて検討を行うことは、今後の社会においても大きな意義を持つものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19パンデミックにより社会状況が一変し、観客を集めるeスポーツイベントが開かれないといった状況や、外出自粛環境という特殊な状況が生じたため、アンケート調査の記事を後ろ倒しにせざるを得なかった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は半年間隔2回のオンラインアンケート調査を行うものであるが、その調査時期が緊急事態宣言下であるのか、社会が正常に戻りつつある状況下であるのかといったことが、調査結果に影響し得るため、調査実施時期を慎重に設定する必要がある。しかしパンデミック状況を正確に予測することは不可能であるため、調査間隔と回数を4.5ヶ月・3回に設定しなおし、可能な限り調査時期の社会的状況の影響を考慮して分析・検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19パンデミックにより、国際学会への出席が不可能であり、またアンケート調査の適切な時期を見出すことができなかった。このため、学会参加旅費と調査委託費が次年度使用分となった。次年度使用額については、時期を繰り下げて調査会社への委託によりアンケート調査を実施するため、当該費用として使用する。当該年度以降分は、eスポーツコンテンツの調査に必要な物品や図書、および成果の発表に必要な学会参加旅費として使用する。
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