研究課題/領域番号 |
20K19568
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
張 潮 福井大学, 学術研究院工学系部門, 講師 (70803419)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 人物動作分析 / 深層学習 / 最適化 / 進化的計算 |
研究実績の概要 |
骨格モデルの検出による動作分析は,スポーツ科学分野における姿勢矯正や運動機能改善に必要不可欠な処理である.近年,人工知能によるビッグデータの活用が急速に広まっている.特に,比較的収集しやすい画像データを大量に用いることで,深層学習による姿勢推定の精度および汎用性は向上の一途をたどっている.本研究では,深層学習による骨格検出結果をスモールデータで最適化することで,ビッグデータおよびスモールデータ,それぞれのデータが持つ価値の融合を目指す.
そのため,今年度は,検出された骨格に基づいて連続する動作の分析を行った.具体的に,一枚の画像から3次元的な人体運動を予測する方法を提案した.提案法は,一枚の画像を入力とし,人体動作における曖昧さを考慮することで,多様でもっともらしい将来の運動予測結果を生成できるようになった.複雑な身体運動は不確実性を伴うため,人間のダイナミクスを理解することが困難とされている.特に,実応用の場面においては,静止画像のように,将来の正確な運動を予測するための情報が不十分の場合が常に存在する.この課題を解決するため,混合密度ネットワークを運動予測に導入した.マルチモーダルであるがゆえに多様な運動仮説を捉えることができ,ガウス分布など単一の分布を用いる従来型の回帰手法より優れた性能がえられた.また,関連する画像マッチングアルゴリズム,クラスターリングアルゴリズム,色転写アルゴリズムを複数提案した.これらの研究成果について,ジャーナル論文5編,国際会議論文3編,国内会議において3件を発表した.以上が今年度行った本研究についての報告である.
さらに次年度の計画として,深層学習を用いた骨格検出器の改良および連続する動作の分析に取り組む.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度では,検出された骨格に基づいて連続する動作の分析を行い,一枚の画像から3次元的な人体運動の予測方法を提案した.これにより,連続する動作の分析が可能になった.実験では,多様な仮説の中から視覚的に正確な(あるいはそれに近い)予測を生成することができた.また,画像中の動作の曖昧性が高いほど,動作仮説のばらつきが大きくなり,バリエーションが増えることもわかった.正解と予測結果の1関節あたりの平均位置誤差を性能評価の基準として比較実験を行った結果,提案手法では約10cmの平均位置誤差を実現し,既存手法を上回った.しかし,提案手法は,2次元の動き抽出モジュールに依存するという大きな制約がある.合理的な2次元骨格を抽出できない場合,予測も失敗する.次年度以降の研究として,過去の運動履歴に基づき,説明可能なAIを組み込み,制御可能な3次元動作の生成・予測を目指す.今年度の研究の成果について,ジャーナル論文5編,国際会議3編,国内会議において3件を発表しており,次年度以降の研究にとって重要である.以上の理由から,おおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
まず,過去の骨格データにより,動作を予測するニューラルネットワークを設計する.必要であれば,再度データの取得を行う.次に,説明可能な動作生成方法を実現するために,ニューラルネットワークが抽出した特徴量を細かく具体的な単位に解きほぐす必要がある.そのため,制御した特徴を分離するためにニューラルネットワークの構造を調整する必要がある.最後に,実環境のテストデータでその有効性・有用性を検証し,アルゴリズム全体の高速化を行う予定である.今後は,研究スピードをさらに向上させ,推進していく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定があった出張が新型コロナウイルス感染拡大により延期になった.また,論文の投稿スケジュールも変更することになった.また,購入予定のハードウェアについて次年度購入することとしたため,次年度使用額が生じた.これらの計画変更について本申請の進捗に影響はほとんどない. 次年度では,必要な物品や前年度で購入しなかった消耗品の購入や,投稿中のジャーナル論文の投稿費用に使用する予定である.
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