研究実績の概要 |
本研究の目的は,S-glutathionylation発生量を変化させる物質を同定し,筋疲労の抑制効果を検討することであった.S-glutathionylationとはタンパク質のシステイン残基とグルタチオンが架橋構造を形成する反応のことで,特にトロポニンIのS-glutathionylationには筋疲労の抑制効果があるとされている.S-glutathionylationはグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)に触媒され形成される.本年度は,GST活性を変化させる化合物の同定を行った. 先行研究に従いbenzyl isothiocyanate, Naphthoflavone, coumarin,disulfiram,α-angelicalactone, indole-3-carbinolおよび indole-3-acetonitrileの7つの化合物をターゲットとした.GST活性は,Bio Vision社製のGST Colorimetric Assay Kitの方法に改変を加え測定した.6.25 unit/ml(最終濃度)となるようにGSTをAssay bufferに添加し,GST活性を測定した.まず,β-Naphthoflavoneとdisulfiram以外の化合物においては,濃度が10 μM(最終濃度)となるようにAssay bufferに添加し,それらの存在下と非存在下のGST活性を比較した.その結果,10 μM indole-3-carbinol存在下ではGST活性が低下した.一方で,GST活性を高める化合物は発見されなかった.この結果は,indole-3-carbinolはGSTの抑制に使用できる可能性があることを示唆する.β-Naphthoflavoneとdisulfiramについては,10 μM ではGST活性測定ができなかったため,最終濃度が1 nM, 10 nMおよび100 nMとなるようにAssay bufferに化合物を添加し,GST活性の測定を行った.しかしながら,β-Naphthoflavoneとdisulfiramを添加したとしても,コントロールと比較しGST活性に顕著な変化は認められなかった.続いて,indole-3-carbinolは,濃度依存的にGSTを阻害するかどうかについて検討し,阻害効果は濃度依存的であることを確認した.
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