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2020 年度 実施状況報告書

骨格筋疲労を軽減する新規化合物の同定-グルタチオン化に着目して-

研究課題

研究課題/領域番号 20K19570
研究機関広島大学

研究代表者

渡邊 大輝  広島大学, 人間社会科学研究科(総), 助教 (30823281)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2022-03-31
キーワード骨格筋疲労 / S-glutathionylation / スキンドファイバー
研究実績の概要

本研究の目的は,S-glutathionylation発生量を変化させる物質を同定し,筋疲労の抑制効果を検討することであった.S-glutathionylationとはタンパク質のシステイン残基とグルタチオンが架橋構造を形成する反応のことで,特にトロポニンIのS-glutathionylationには筋疲労の抑制効果があるとされている.S-glutathionylationはグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)に触媒され形成される.本年度は,GST活性を変化させる化合物の同定を行った.
先行研究に従いbenzyl isothiocyanate, Naphthoflavone, coumarin,disulfiram,α-angelicalactone, indole-3-carbinolおよび indole-3-acetonitrileの7つの化合物をターゲットとした.GST活性は,Bio Vision社製のGST Colorimetric Assay Kitの方法に改変を加え測定した.6.25 unit/ml(最終濃度)となるようにGSTをAssay bufferに添加し,GST活性を測定した.まず,β-Naphthoflavoneとdisulfiram以外の化合物においては,濃度が10 μM(最終濃度)となるようにAssay bufferに添加し,それらの存在下と非存在下のGST活性を比較した.その結果,10 μM indole-3-carbinol存在下ではGST活性が低下した.一方で,GST活性を高める化合物は発見されなかった.この結果は,indole-3-carbinolはGSTの抑制に使用できる可能性があることを示唆する.β-Naphthoflavoneとdisulfiramについては,10 μM ではGST活性測定ができなかったため,最終濃度が1 nM, 10 nMおよび100 nMとなるようにAssay bufferに化合物を添加し,GST活性の測定を行った.しかしながら,β-Naphthoflavoneとdisulfiramを添加したとしても,コントロールと比較しGST活性に顕著な変化は認められなかった.続いて,indole-3-carbinolは,濃度依存的にGSTを阻害するかどうかについて検討し,阻害効果は濃度依存的であることを確認した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

計画当初は今年度の段階で標的とする化合物の同定および生体への投与に最適な条件の決定を完了している予定であった.しかしながら,上述の段階まで研究は完了しておらず,やや遅れていると判断した.

今後の研究の推進方策

ここまでの研究で,indole-3-carbinol存在下ではGST活性が低下することが明らかとなった.当初はGST活性を高めること化合物を模索する予定であったが,そのような化合物は今のところ発見できていない.今後は,GST活性を高めることのできる化合物を引き続き模索するとともに,indole-3-carbinolの利用方法を考える必要があると思われる.近年,我々は,S-glutathionylationがNa+-K+ ATPaseに生じると,膜の興奮性が低下し,これが運動中の筋疲労の一因となりうることを明らかにした.このことを考慮すると,indole-3-carbinolを利用すれば,運動中の筋疲労が軽減できる可能性がある.これに関しては,今後,生体においてindole-3-carbinolが作用する条件を検討し,その後,適切な条件でこれらの化合物を投与し,筋疲労にどのような影響を及ぼすかを検討する必要があると思われる.

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Orthograde signal of dihydropyridine receptor increases Ca2+ leakage after repeated contractions in rat fast-twitch muscles in vivo2021

    • 著者名/発表者名
      Watanabe Daiki、Wada Masanobu
    • 雑誌名

      American Journal of Physiology-Cell Physiology

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1152/ajpcell.00364.2020

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Fatigue‐induced change in T‐system excitability and its major cause in rat fast‐twitch skeletal muscle in vivo2020

    • 著者名/発表者名
      Watanabe Daiki、Wada Masanobu
    • 雑誌名

      The Journal of Physiology

      巻: 598 ページ: 5195~5211

    • DOI

      10.1113/JP279574

    • 査読あり
  • [学会発表] 生体で骨格筋収縮力が変化した原因を明らかにするために:in vivo収縮とメカニカルスキンドファイバーの融合2021

    • 著者名/発表者名
      渡邊大輝,和田正信
    • 学会等名
      第94回日本薬理学会
  • [学会発表] 伸張性収縮に伴う筋細胞内小器官の機能変化2021

    • 著者名/発表者名
      渡邊大輝
    • 学会等名
      第28回日本運動生理学会
    • 招待講演

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公開日: 2021-12-27  

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