本研究の目的は、立位バランス課題中の脳の賦活レベルに応じて、ニューロモデュレーション法(経頭蓋直流電気刺激:tDCS)がもたらすパフォーマンス改善効果に違いが生じるかを明らかにすることであった。本年度は、姿勢要求に応じた脳活動の変化について明らかにするために、以下の内容を実施した。 (1) 実験環境を構築後、16名の健常者に対して、姿勢課題中の脳波・筋電図・三次元動作装置の同時計測を実施した。また、予備的データとして、脊髄小脳変性症者2名に対して同じ計測を行い、それぞれ結果を比較した。(2) 得られたデータに対して、時間周波数解析および信号同期解析を施し、姿勢動揺に応じた脳波および筋活動の動的変化について検討した。(3)tDCSと脳波計測を同期する実験環境の構築を目指し、より適切な刺激電極の配置・サイズ・強度について調べた。経頭蓋磁気刺激による運動誘発電位を指標として、刺激効果を担保した上で、脳波計測が可能な設定ついて検証した。 以上の検討により、姿勢動揺の位相に応じて脳-筋の連結が一過性に変化するとともに、姿勢要求が高まる場合に、低周波帯の信号パワーが減衰することが明らかとなった。
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