研究課題/領域番号 |
20K19577
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
室伏 由佳 順天堂大学, スポーツ健康科学部, 講師 (60740529)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アンチ・ドーピング / アンチ・ドーピング教育 / 禁止物質 / 禁止物質確認行動 / サプリメント / アスリート / 大学生アスリート / Grit |
研究実績の概要 |
大学生アスリートが薬やサプリメントを使用する際の禁止物質確認行動の実態を把握するために複数の調査研究を進めた。具体的な進捗状況として、まず大学生アスリート及び一般学生におけるサプリメント使用状況と確認行動(4件法)に関する調査を行った。サプリメントの年間使用率は一般学生73.6%、全国レベル53.6%、国際レベル76.2%であった。確認行動について一般学生は“調べることを考えなかった”程度で、全国・国際レベルは“知っていたが調べなかった”程度であり、全国・国際レベルの確認行動は不十分であった。確認行動が不十分なアスリートに対しアスリートの責務を喚起する教育の必要性が示唆された。続いて、アンチ・ドーピング教育経験が薬やサプリメント使用時における確認行動に及ぼす影響について競技水準、ドーピング検査経験の交絡要因を考慮し統計的に分析した。薬の確認行動を必ず行った者は、地区、県は0%、全国18.1%、国際33.3%であった。サプリメントの確認行動を必ず行った者は、地区2.4%、県0%、全国22.3%、国際20%であった。統計分析の結果、教育経験と薬及びサプリメント使用時の確認行動との間に有意な関連は示されなかった。これまでの教育経験は確認行動の促進に結び付いておらず、確認行動を喚起する教育の必要性が示唆された。次に、長期に渡り禁止物質の確認行動を促進する要因を把握するために、Grit(非認知的特性)が確認行動に及ぼす影響について交絡要因を考慮して統計的に分析した。興味の一貫性の高群は、低群と比較し、オッズ比で2.2倍確認行動を行っていることが判明した。興味の一貫性の高低を考慮した教育の試みが確認行動実践の促進に有用である可能性が示唆された。主な学術的成果として、得られた知見を国内外の学会で発表行うと共に、国内の学術誌に掲載した。更に英文論文としてまとめ学術雑誌への投稿準備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は2つの研究計画で構成されており、研究1はアスリートの禁止物質に対する確認行動の実態解明およびアンチ・ドーピング知識、学習意欲の実態把握である。また、研究2は、アスリートの禁止物質に対する確認行動の促進要因と抑制要因を解明することである。初年度は、研究1の推進を行い、大学生アスリートが薬やサプリメントを使用する際に、禁止物質が含まれていないかの確認行動をどの程度行っているか実態を調査し、アンチ・ドーピングの予防行動を把握することであった。未公表であるが、アンチ・ドーピング知識、学習意欲に関する調査の実施も完了しており、研究計画はほぼ予定通り進展した。そのため、研究の進捗状況としては「おおむね順調に進展している」状況である。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の研究において明らかとなったアスリートの禁止物質に対する確認行動に関する実態把握を踏まえ、アンチ・ドーピングの知識状況(実際の知識と主観的な知識の差)、及び、アンチ・ドーピングに対する学習意欲に関する調査研究を進める。加えて、研究2の計画である、禁止物質確認行動に対する促進要因と抑制要因の解明についても実態把握調査を進める。全ての競技水準のアスリートを対象とし、禁止物質の確認行動を促進する要因と抑制する要因について解明していく。調査の結果は国内外の学術集会における発表および論文化を行い公表していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響により、計画していた国内および国際学会の移動、渡航が中止となったため、計上していた交通費及び渡航費などの予算の執行がなかったため。
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