研究実績の概要 |
当該年度はオープンスキルスポーツである野球のアスリートの脳の特性を検討した。15名の大学野球選手と18名のクローズドスキルスポーツ選手(陸上競技、競泳)を対象として、MRIにてT1強調画像、拡散強調画像、安静時脳活動、磁気共鳴スペクトロスコピーを取得した。本年度は解析が進んでいるT1強調画像をvoxel-based morphometry法にて解析した結果を報告する。クローズドスキルアスリート群と比較して、野球アスリート群では、補足運動野、運動前野、小脳、視覚関連領域などの灰白質量が有意に高いことが明らかになった(p < 0.05, FWE -corrected)。これらの領域は、緻密な運動制御や視覚処理を必要とする野球の競技特性をよく反映しており、長年にわたる野球のトレーニングによって脳の可塑性を誘導した結果であると考えられる。 一方、クローズドスキルアスリート群のほうが野球アスリートよりも灰白質量が高かった領域として、島皮質や一次体性感覚野、上頭頂小葉が検出された(p < 0.05, FWE -corrected)。これらは情動や体性感覚処理に関わる領域であり、地道に自身の身体と向き合う陸上競技や競泳の競技特性を反映している可能性がある。
また、MRIによる脳指標の他に、競泳、特にフィンスイミング選手の脊髄反射の特性も検討した。フィンスイミング選手のヒラメ筋より筋電図を記録し、伏臥位と立位姿勢にて脊髄反射の指標であるH反射の振幅値を取得した。通常、臥位時よりも立位時にH反射は低下を示すが、フィンスイミング選手のH反射は立位時でも変化しないという結果を得た。
|