研究課題/領域番号 |
20K19607
|
研究機関 | 清和大学 |
研究代表者 |
酒本 夏輝 清和大学, 法学部, 講師 (10824063)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 運動学習 / 教示方法 / 運動エラー / 知覚運動パフォーマンス / 注意 / 不安 / 脳内情報処理 |
研究実績の概要 |
ヒトが新たな運動を獲得するような時には、指導者からのアドバイスを基に試行ー失敗の学習過程を経て運動課題の成功、運動スキルの獲得にたどり着く場合が多く、運動学習において教示は重要な役割を担う。運動中における失敗は初心者の運動学習中だけに限らず、運動熟練者であっても運動エラーを避けることはできない。トップレベルの競技者は、練習中に非常に優れた運動パフォーマンスを発揮できる。それにも関わらず、試合で勝利を左右するような高いプレッシャー状況下では、パフォーマンスエラーを引き起こす。優れた指導者の適切な教示やアドバイスは、競技者のパフォーマンスエラーの軽減に有効に働き、競技者を成功に導くことができるだろう。 このような背景から、初心者から熟練者まで、個人の運動成功体験を誘導するのに効果的な教示法の確立が求められる。運動パフォーマンスエラーを導く要因の一つは、自分自身の運動パフォーマンスに対する心理的不安あるいは、勝利・報酬・衆人環視など他者による客観的評価に関連して生じる心理的プレッシャーである。このような心理的不安、プレッシャーが生じる背景として、注意の偏りが原因であることが報告されている。以上のことから、2020年度は、不安による注意の偏り現象に焦点を当て、不安と知覚運動パフォーマンスの関係性を明らかにするため実験を行った。 実験課題1として、不安誘発のために手指に対する微弱な電気ショックを与える「脅威試行」と電気ショックが与えられない「安全試行」で構成された選択反応課題を設定した。さらに、選択反応のために提示される画像には、「Happy face」と「Angry face」を設け、注意の偏りを検討した。その結果、「安全試行」よりも「脅威試行」で反応時間が遅延した。さらに、「脅威試行」のなかでも、「Angry face」が提示された時に、より反応が遅くなることが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の遂行にあたり、先行研究レビューを十分に行うことから始め、自らの研究に対する立ち位置を明確にした。先行研究レビューにより、本実験課題における目的に対する仮説を立てることが可能となり、この仮説を証明するために課題を分けて計画・実行することができている。また実験課題の設定については、先行研究に習う形で実験課題を設定し、十分な予備実験を実施した。被験者の募集に関しては、実験協力参加者の募集がスムーズに行われた。実験の実施、解析においては、安全性と正確性を十分に担保するため、複数の実験実施者の立ち合いの元に遂行した。
|
今後の研究の推進方策 |
2020年度は、前述の理由によりおおむね順調に進展しており、2021年度については、新たな実験課題の設定、実施に向けて進めていく予定である。 特に、2020年度の実験課題により、電気ショックによる不安状況の設定及び注意の偏りを明らかにすることができたため、次の実験課題においては、選択反応課題をより実際の運動場面に近い形で実施できる仕組みを構築し、実験を行う予定である。運動場面に近い形での運動実施において、不安や注意の偏りが運動エラーに影響を与えるかどうかを明らかにする。 この実験課題が遂行された後には、同運動課題において異なる教示を与え、教示の差異が運動エラーに影響するかどうかを明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2020年度における計画段階で参加の見込まれていた学会大会が、新型コロナウィルス感染拡大の影響により不参加となり、旅費への支出が予定よりも減少したため。 2021年度においては、オンライン学会参加や論文執筆における英文校正等に繰越金を使用する予定である。
|