【背景と目的】不安が生じる状況下での不適切な声かけ(以下,教示)は,運動パフォーマンスを低下または運動エラーを誘導する可能性がある.これまでに先行研究では,不安時における運動エラーは,注意の偏りが影響していると報告されている.しかしながら,これまでに,不安×教示×運動パフォーマンスについて,注意の偏りに着目し,行動指標及び生理学的指標を用いて検証された研究は数少ない.本研究では,不安時における教示と運動エラーの関係について,知覚運動パフォーマンス課題時に脳波を測定することで,運動実行系と認知処理系のメカニズムを明らかにすることを目的として実験を行った. 【2020年度】先行研究を整理し,不安と知覚運動パフォーマンスを検証するための実験課題を設定した.本実験課題では,実験的に状態不安を操作し,注意の偏りと運動パフォーマンスの関係を検証した.実験の結果,状態不安の高低や行為目標の違いによって,注意の偏りが生じること,反応時間が遅延することが明らかとなった. 【2021年度】これまでの不安と知覚運動パフォーマンスの関係を論文にまとめ,さらに先行研究では着手されてこなかった,避ける行為目的の選択反応動作を伴う実験課題を設定した.特に,注意の偏りにおいては,注意の引きつけと,離れづらさを検証するために実験課題を分けた.実験の結果,避ける行為には特異的な反応が示された. 【2022年度】より実際の運動場面に近い状態の実験課題を設定し,生理学的指標として脳波を同時に記録した.得られたデータを現在解析中であるが,運動場面に近い状態の実験課題では,注意の偏り現象を誘導することが困難であることが予想された.一方で,active電極を採用した脳波計によって運動中の脳波測定も可能となり,今後の実験課題に繋げられる可能性が示された. 最後に,本研究で得られた研究成果は,現在論文にまとめている段階である.
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