研究課題/領域番号 |
20K19630
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研究機関 | 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所) |
研究代表者 |
小林 佳雄 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 運動機能系障害研究部, 外来研究員 (10846174)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 歩行 / 運動学習 / 脳卒中 / 適応 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、①脳卒中後の歩行運動パターンのタイプ分類を図ること、②障害特性に考慮した歩行障害の改善手法を考案することである。
脳卒中の歩行障害においては、脳卒中歩行が、脳卒中以外の神経疾患や整形疾患など疾患横断の視点からみた歩行障害に対して、どのように位置付けられるか明らかにすることで、より詳細な理解につながると考えられる。そこで申請者は、脳卒中だけでなく、様々な疾患の歩行障害の構造分析および異常歩行パターンの特徴抽出を追加課題として加えた。対象者135例(健常者、整形疾患、パーキンソン病、脊髄小脳変性症、脊髄障害、脳卒中)において、三次元動作計測および床反力計測により得たデータから歩行の評価変数として42変数を算出し、探索的因子分析を行った。そして、得られた潜在因子間の相関関係・因果構造を基に構造方程式モデリングを試み、その理論的妥当性を検証した。この取り組みから、歩行パフォーマンスに影響する要因を説明し得る構造モデルの作成と、疾患を隔てた歩行パターンを分類した。
これら疾患横断の視点からの歩行分析に加え、脳卒中後の歩行についても特徴抽出を行なった。その結果、歩行障害を特徴付ける、運動学的変数、運動ダイナミクスに関する変数、左右対称性に関する変数、クリアランスに関する変数の運動特性による4因子が抽出された。この4因子をもとにクラスター分析を実施したところ、回復期、維持期、高齢者・若年者群を概ね大別する歩行パターンが分類された。これらの結果は、損傷領域や症状のバリエーションによって、多様な特徴を呈する脳卒中歩行に対して、症例個々が集団の中でどのように位置付けられるか評価することにつながる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
疾患横断の視点から検証した歩行障害の構造モデルの作成と歩行パターンの分類と、脳卒中後歩行における歩行障害特性の抽出に関する成果を、現在、国際誌に投稿準備中だが、論文の精度を高める上で時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、脳卒中後にみられる歩行非対称性を合目的に改善へと導く歩行リハビリテーション方法の構築を目指し、歩行を構成する要素(時間、空間、荷重)に系統的な操作を与え得る様々な条件下の歩行(トレッドミル上での左右独立のベルト速度下での歩行、坂道歩行等)を用いることで、歩行の学習性・適応性について新たな知見を得ることを目的としている。現在、慢性期脳卒中対象者を中心に、各課題前後の歩行データを取得しつつあり、今後データ解析を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
感染状況を勘案し、外部からの研究協力者を制限していたため、当初計画していた人件費が余剰となった。また、学会や研究会においてもオンライン開催だったため、旅費が余剰となった。これらの繰越金は、次年度において、参考資料となる図書費やデータ解析に用いるソフトライセンス、論文投稿費等に補填する予定である。
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