研究課題/領域番号 |
20K19633
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
堀 大介 筑波大学, 医学医療系, 助教 (10823693)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 感謝 / ポジティブ心理学 / メンタルヘルス / 互恵性 / 労働者 |
研究実績の概要 |
研究開始当初の目的として感謝に着目した三段階の研究を設定した。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響で当初の計画通りの遂行が困難となったため、【研究1】主観的健康指標をアウトカムとした横断研究の構想を膨らませ、追加の疫学調査、解析、学術発表を行っている。2021年度には感謝指標を含む1報と、残りのデータを活用して感染症予防に関する2報の英語論文を発表した。 1つ目の論文では、感謝と対照的なネガティブなコミュニケーションであるいじめをテーマに解析を行った。正社員1,200名を対象としたウェブ調査で、全体の8.0%が週に1回以上の頻度で職場のネットいじめを受けていることが分かった。職場のネットいじめを受ける頻度と関連する特徴として、年齢が若い、管理職であること、困難な業務に取り組んでいること、インターネットによる情報発信が活発であること、テレワークの頻度の多さが挙げられた。さらに、インターネットを介さない形態のいじめやネットいじめを受けている場合、いずれのいじめも受けていない場合と比較して、心理的苦痛、不眠、孤独感を示す指数が統計的に有意に高いことが分かった。また、職場の感謝の高さは、これらの指数と負の関連性があった。 2つ目の論文では、茨城県の独自の新型コロナウイルス感染予防システムである「いばらきアマビエちゃんの利用と10項目の感染予防行動の実践度との関連性を解析した。結果、システムの利用と、体温測定などの体調管理の実践度との間に、統計学的に有意な関連性が見られた。 3つ目の論文では、新型コロナウイルスワクチンを接種すべきか決めかねていた人々の半年後のワクチンの接種状況と、20種類の情報源の利用との関連性を評価しました。その結果、情報源が職場・学校やLINEだった人はワクチン接種率が高く、ネットニュースや動画共有サイトだった人は接種率が低かったことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
【研究1】主観的健康指標をアウトカムとした横断研究は、軌道修正がありながらも順調に進んでいる。前年度までに得られたデータをもとに成果発表を精力的に行い、査読付き英語論文3本や和文総説1本を発表した。 【研究2】客観的健康指標をアウトカムとした横断研究や、【研究3】感謝プログラムと睡眠日誌の併用が不眠度や睡眠習慣に与える影響を検討する介入研究に関しては、新型コロナウイルス感染症のために中断していた。
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今後の研究の推進方策 |
【研究1】について成果発表はそれなりにできている。ただし、本研究課題のメインテーマである職場での感謝を中心に据えた論文がまだ発表できていない。本年度は集中して執筆に当たりたい。 【研究2】や【研究3】は対象者数を縮小して実験計画を新たに策定中であるが、場合によっては【研究1】に吸収するなど、取捨選択して効率よく進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
【研究2】や【研究3】が中断したため、それらに使用予定だった額が未使用となった。また、学会がオンライン開催となったため予定していた旅費が未使用となった。次年度使用額は【研究1】を推進するための追加の調査に用いることを検討している。
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