研究課題/領域番号 |
20K19640
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
金 湘殷 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 特任研究員 (10864762)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | microRNA / 脂肪肝 / NAFLD / NASH / ミトコンドリア / 実験病理学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、脂肪性肝疾患発症過程における、炎症性非コード RNA ワールドを具備した階層的遺伝子発現制御機構の全容解明し、脂肪性肝疾患の抑制および改善に資する新規ミトコンドリア機能の発見並びに核酸医薬を開発することである. 本年度は(1)肝臓病理学に基づく脂肪肝疾患モデルマウスの作製、(2)次世代シーケンス(NGS)を用いた miR-142 が関与する脂肪滴分解における遺伝子発現機能解析、(3)収束イオンビーム搭載高分解能型走査型電子顕微鏡 (FIB/SEM)を用いた、肝臓ミトコンドリア形態機能解析を行った.具体的な研究成果は下記である. (1)種々の遺伝子改変マウス(全身性 miR-142 KO マウス、肝細胞特異的 KO マウス、クッパー細胞特異的 KO マウス)(生後 8 週齢)に高脂肪食餌を 4-12 週間与えた。その後、経時的にサンプルを採取し、肝臓を中心とした病理学的検証を実施した。その結果、単純性脂肪肝モデルマウス作製の確認することができた。現在は、そのサンプルを用いて遺伝子発現解析及びミトコンドリア解析を行っている。 (2)NGSで取得した RNA-seq データを Strand NGS を用いて情報解析を行い、 mRNA 及びmiRNA 発現解析、 脂肪滴分解における miR-142 の機能解析などを中心とした、miR-142 の翻訳制御機構の包括的解析を行った. (3)FIB/SEM を用いた肝臓試料の連続電子顕微鏡像を撮影・分析を行い肝臓由来ミトコンドリアの立体的形態を解析した.この結果、miR-142 の発現による肝臓由来ミトコンドリアの立体的形態の維持的変化を確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全身性 miR-142 KO マウス、肝細胞特異的 KO(cKO)マウス、クッパー細胞 cKO マウスを用いた脂肪肝モデルマウスを作製し、滞りなく試料を採取できた。そして、脂肪滴分解における miR-142 の機能解析を行うことができた.NGS から得られた大量な遺伝子発現データを、既存のデータベース及びStrand NGSを用いた情報解析を行い、その結果 mRNA 及び miRNA 発現解析、miRNA 標的遺伝子抽出、GO 解析、代謝・シグナル伝達解析、非コードRNAの翻訳制御機構の包括的解析手法を確立することができた.更に、FIB/SEMを用いた連続断面観察法を行い、肝臓由来ミトコンドリアの三次元再構築に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度の実績を踏まえ、以下の3つの実験項目を実施する.(1) 遺伝子改変マウスを用いた脂肪肝発病マウスモデル試料及びヒト肝臓検体(正常肝、脂肪肝、NASH)を収集する。(2)細胞外フラックスアナライザーを用いてハイスループットエネルギー代謝解析及びリアルタイムPCR法を用いてミトコンドリアの機能評価並びに遺伝子発現を検証する.(3) 様々な細胞群の相互作用によって進行する脂肪蓄積や線維化におけるmiR-142の分子的役割を究明するため、バルクサンプル(組織細胞塊)を用いたシングルセル解析を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響で試薬類の納品が遅れたため、次年度使用額が生じた。現在は試薬納品も安定しつつあり、本年度購入する予定である。
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