研究課題/領域番号 |
20K19648
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
橋本 良太 順天堂大学, 医学部, 准教授 (60433786)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ビタミンB2 / マクロファージ / 酸化LDL / 動脈硬化 |
研究実績の概要 |
ビタミンB2は、肌あれ・口内炎の改善などのサプリメントとして利用されるほか、動脈硬化の原因になる高コレステロール血症を改善するために医薬品としても使用されている。しかしながら動脈硬化を改善するという報告はなく、ビタミンB2が動脈硬化を増悪させる何らかの作用を併せもつ可能性が示唆されていた。そこで、「ビタミンB2が動脈硬化を増悪させるかどうか」を検証することを目的として本研究をスタートした。 前年度は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が猛威を振るう中、当初予定していた研究時間を確保できなかった。そこで当該年度は、当初1年目に予定していた「動脈硬化の発症過程におけるビタミンB2の作用をマウス由来の細胞で解明(in vitro)すること」を目指した。 血管内皮細胞の障害は動脈硬化の発症過程の一つである。マウス大動脈から単離した内皮細胞にビタミンB2を添加し、死細胞染色の蛍光色素であるPIで染色される細胞の割合をフローサイトメトリーにて測定したが、細胞障害の程度に差異は認められなかった。また、マクロファージが内膜中の酸化LDLを貪食しコレステロールを貯めこむことで血管を肥厚させることも動脈硬化の発症過程の一つである。マウス大腿骨および脛骨から単離した骨髄液由来のマクロファージに対して蛍光標識された酸化LDLコレステロールとビタミンB2を添加した後、酸化LDLの取り込みをフローサイトメトリーにて測定した。ビタミンB2を添加した群では、酸化LDLの取込みが有意に増大していた。スカベンジャー受容体は酸化LDLなどの変性リポタンパク質を認識する。マクロファージの泡沫細胞化に主要な役割を果たすスカベンジャー受容体はCD36とCD204であるが、ビタミンB2はこれらスカベンジャー受容体の発現量に影響を及ぼさなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
1年目(前年度)は、COVID-19が猛威を振るう中、緊急事態宣言や不測事態による研究中断に備えるため、当初予定していた研究時間を確保できなかった。そのため研究が遅延していたが、その影響が当該年度にも残っている。ただし、当初1年目に予定していた計画を2年目(当該年度)に実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終目的は、「ビタミンB2が動脈硬化を増悪させるかどうか」を検証し、サプリメントとして「副作用の出にくい摂取量の提示」と「安全な使用」につなげることである。次年度は、当初2年目に予定していた「マウス(in vivo)にてビタミンB2の摂取量と動脈硬化の関係をモニタリングすること」と「動脈硬化の発症過程におけるビタミンB2の作用をヒト由来の細胞(in vitro)で検証すること」を実施したい。ただし「マウス(in vivo)にてビタミンB2の摂取量と動脈硬化の関係をモニタリング」の開始時期については、緊急事態宣言や不測事態による研究中断が実験動物に与える不利益を考慮しながら、COVID-19の状況に応じて判断したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
1年目(前年度)は、COVID-19が猛威を振るう中、緊急事態宣言や不測事態による研究中断に備えるため、当初予定していた研究時間を確保できずに実支出額が0円であった。当初1年目に予定していた計画は当該年度に実施した。当初2年目に予定していた計画までは実施できなかったため、次年度使用額が生じた。生じた次年度使用額は、当初2年目に予定していた計画を実施するために使用する予定である。
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