研究課題/領域番号 |
20K19661
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
赤澤 直紀 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 講師 (90789603)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 筋内脂肪量 / 高齢入院患者 / 大腿四頭筋 / 嚥下 / 低栄養 / 超音波 |
研究実績の概要 |
2018年に発表された世界規模の低栄養診断基準では,筋量の減少が,重要な現症の一つとして位置づけられている。一方,我々はこれまでに,高齢入院患者の骨格筋内における脂肪量(筋内脂肪量)の特徴を横断的に調査してきた。それら成果として,高齢入院患者の大腿四頭筋の筋内脂肪量の増大は,重度低栄養リスクと関連すること,さらにそれらは,筋量の減少よりも,嚥下機能と歩行自立度の低下に関連することを見出した。これら結果は,筋内脂肪量の増大は,筋量の減少よりも,高齢入院患者の予後に悪影響を与える可能性を示していた。本研究では,その可能性を検証するため,高齢入院患者における筋内脂肪量の増大と日常生活動作能力,在宅復帰率および生存率の低下との縦断的関連性を明らかとする。これら関連性を明らかとすることで,高齢入院患者の低栄養の議論において,筋量の減少よりも,筋内脂肪量の増大に着目する重要性を提示する。2023年度の研究成果として,高齢入院患者の入院時の大腿四頭筋の筋内脂肪量の増大が自宅復帰率の低下に関連することを明らかとした。これら知見は大腿四頭筋の筋内脂肪量を改善させる介入が自宅復帰率の改善に繋がる可能性を示したものであると考える。さらに,高齢入院患者の入院中のタンパク質摂取量の増大が大腿四頭筋の筋内脂肪量の減少に関連することを明らかにした。これら知見は高齢入院患者の大腿四頭筋の筋内脂肪量の改善には栄養介入が重要であることを示した点で非常に意義があると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度の研究成果として,次の2点が挙げられる。1点目として、高齢入院患者の入院時の大腿四頭筋の筋内脂肪量の増大が自宅復帰率の低下に関連すること、一方で入院時の大腿四頭筋の筋量は自宅復帰率には関連しないことを明らかとした。これら知見は、大腿四頭筋の筋量を改善させる介入よりも大腿四頭筋の筋内脂肪量を改善させる介入が自宅復帰率の改善に繋がる可能性を示唆したものであると考え価値あるものと考える。2点目は、高齢入院患者の入院中のタンパク質摂取量の増大が大腿四頭筋の筋内脂肪量の減少に関連すること、一方で入院中のタンパク質摂取量の変化は大腿四頭筋の筋量の変化とは関連を示さないことを明らかとした。これら知見は、大腿四頭筋の筋内脂肪量を改善させる栄養介入を模索する上で重要になると考える。本研究課題では前述の研究成果に加え、これまでに、高齢入院患者の入院時の大腿四頭筋の筋内脂肪量は筋量よりも退院時の日常生活動作能力に関連すること、高齢入院患者の入院時の大腿四頭筋の筋内脂肪量の増大は嚥下能力の回復に悪影響を与えること、高齢入院患者の入院時の低栄養リスクは入院中の大腿四頭筋の筋内脂肪量の増大に関連することを明らかにしている。これらを踏まえると、現在までの進捗としてはおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は次の3点について研究を進めていきたいと考える。第一に、高齢入院患者におけるGeriatric Nutritional Risk Indexで評価された低栄養リスクの入院中の変化が入院中の大腿四頭筋の筋内脂肪量や筋量の変化に関連するかどうかについての結果を公表する。第二に、Global Leadership Initiative on Malnutrition基準の現症型基準に従い高齢入院患者を重度低Body Mass Index(BMI)群、中等度低BMI群、標準BMI群に群分けし、それぞれの群における入院中の体重の変化が入院中の大腿四頭筋の筋内脂肪量や筋量の変化に関連するかどうかについての結果を公表する。第三に、85歳以上の高齢入院患者における入院中の大腿四頭筋の筋内脂肪量の変化が65~74歳、75~84歳の対象のそれらと比べ差異を示すのかどうかについての結果を公表する。これら研究成果は全て国際誌にて公表する予定である。これらを明らかにすることは臨床栄養領域の発展に大きく貢献すると考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度より数編の論文(今後の研究の推進方策で示した内容をまとめた論文)を国際誌に投稿しており、当初の予定では2023年度中にアクセプトを得て結果のオープンアクセス化につなげる予定であった。しかし、査読期間の延長などが影響し、2023年度にすべての結果の公表に繋げることができなかった。したがって、2024年度も引き続き論文投稿を進める目的で次年度使用を計画した。
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