研究課題
前年度に得られた結果から、Elovl6欠損由来の神経幹/前駆細胞 (NSPC)における自己複製能の低下が、特定の脂質分子種の合成酵素を阻害することで回復することを見出した。また、トランスクリプトーム解析から、自己複製能に重要な因子が変動していたこと、脂質メタボローム解析の結果から、Elovl6の欠損は特に細胞膜のマイクロドメインの構成に重要な脂質分子種が特に大きく変動していることを明らかにした。トランスクリプトーム解析から抽出された因子は、マイクロドメインに局在していることが既に報告されている。そこで、ショ糖密度勾配遠心法を用いてマイクロドメインの画分の評価をおこなった。その結果、Elovl6欠損由来のNSPCはマイクロドメインの画分がコントロールと異なる位置に検出されることが明らかとなり、Elovl6の欠損は細胞膜マイクロドメインの構造に影響をおよぼすことが示唆された。この画分の変化は特定の脂肪酸や、脂質分子種の合成酵素の阻害剤を添加することでコントロールと同程度まで回復した。また、NSPCの多能性に関する評価をおこなった。Elovl6欠損由来のNSPCはニューロンの割合はコントロールと有意な差は認められなかったが、突起伸長の亢進が認められた。さらに、アストロサイトへの分化が亢進していることが明らかとなった。したがって、Elovl6は細胞膜マイクロドメインの構成を制御することで、NSPCの自己複製能と分化能を制御している可能性が示唆された。今後、マイクロドメインの変化がどのように自己複製能や分化能を制御しているのかを、オルガネラレベルでの解析を通して分子レベルで明らかにしたい。
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Biochimica et Biophysica Acta (BBA) - Molecular Basis of Disease
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https://www.u-tsukuba-endocrinology.jp/
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