研究課題/領域番号 |
20K19673
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
劉 彦言 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 研究員 (10845796)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ChREBP / GIPR |
研究実績の概要 |
糖尿病の発症や重症化予防に向け、インクレチン分泌機序及びインスリン抵抗性を改善する新規治療開発の重要性が増している。肥満に伴いインスリン抵抗性が進んで、GIP分泌の上昇が見られる。また、GIPシグナル欠損マウスや阻害薬を投与するマウスにおいて、高脂肪食誘導する肥満が抑制された。グルコース活性化遺伝因子ChREBPは、解糖系・脂肪合成系遺伝子発現を調節することで、糖質から脂肪への変換を促進する。脂肪組織のChREBP発現量とインスリン感受性は正の相関を示すことが知られている。ChREBPの機能抑制因子として、cAMPとAMPが知られている。肥満に伴いGIPが上昇し、細胞内のcAMP増加を介してChREBPの活性を抑制することが予想される。以上の結果から考えると、ChREBPはインクレチン分泌の調節に関与することが考えられる。ChREBPとインクレチンシグナルの調節関係を明らかにすることで、脂肪組織におけるインスリン感受性低下及び肥満の進展の際GIP分泌上昇のメカニズムの解明、標的とした糖尿病の発症・重症化抑制の新規治療戦略開発の基盤を創出できると考えられる。 今回、GIP受容体欠損(GIPR-/-)マウスを用いて、脂肪組織におけるChREBPの発現量を検討した。GIPRマウスでは、WTと比べChREBP発現量の有意な減少が認められた。また、GIPシグナルとChREBPの調節関係を調べるために、GIPR欠損とChREBP欠損のダブルノックアウトマウス(GIPR-/-ChREBP-/-)を作製した。インスリン負荷試験(ITT)では、WTと比べ、GIPR-/-の血糖値が有意に低下したが、GIPR-/-ChREBP-/-の血糖値が変わらなかった。以上から、GIPRシグナルはChREBPが関与する可能性が示唆された。今後の検討は必要があると考えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の実験予定どおり、概ね順調に進展している。 ただし、ダブルノックアウトマウスを作るために時間が予想よりもっとかかった。それと、単離した脂肪組織の分化誘導の手技の改善を検討している。
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今後の研究の推進方策 |
WT、GIPR-/-、ChREBP-/-とGIPR-/-ChREBP-/-マウスのインスリン感受性関連する遺伝子の発現量を検討する、また、マウスから単離した前脂肪細胞を脂肪細胞に分化させたのち、グルコース取り込みを検討する。さらに、飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸の含有比率を変えた3種類の高脂肪食(不飽和脂肪酸食、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸+飽和脂肪酸食)を4週間WT マウスに負荷し、血中GIP濃度とともにChREBPの活性に影響が出るか検討する。
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