研究課題/領域番号 |
20K19675
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
大西 康太 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 助教 (80723816)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | オートファジー / In vivo活性評価系 / 近赤外蛍光イメージング / 遺伝子プローブ / AAVベクター |
研究実績の概要 |
細胞内異常分子の分解を担うオートファジーは、老化やそれに伴う難治性疾患に対する予防戦略として注目される一方、生体における活性強度を正確に評価する手段に乏しいために、その応用研究が遅れている。本研究では、マウス諸臓器におけるオートファジー活性をモニターするための新規in vivoライブイメージイング法の確立を第一の課題に設定しており、令和2年度は、主に、この新規活性評価系の構築を目標に研究を進めた。 マウス体内におけるオートファジー活性を生体外から可視化するために、まず、2種類の近赤外蛍光タンパク質により標識した遺伝子プローブ(miRFP720-LC3-miRFP670-FLAGx3)を作出した。この遺伝子プローブを発現させたHeLa細胞に対し、オートファジー活性化剤、もしくは、阻害剤を処理したところ、想定通りにmiRFP720-LC3フラグメントの発現が増減したため、miRFP670-FLAGx3フラグメントを内部標準として検出することでオートファジーフラックスの定量評価に利用できることが確認できた。続いて、2種類のアデノ随伴ウィルスバスター(AAV2/9、もしくは、AAV-PHP.eB)を用いてマウスにプローブ遺伝子を導入し、肝臓組織、または、脳組織に選択的にプローブを発現させた。IVIS spectrumを用いて、遺伝子導入マウスを麻酔下で近赤外蛍光イメージングに供したところ、プローブ由来の2種類の近赤外蛍光を体外から検出することに成功した。しかし、本マウスに対してオートファジー活性化剤/阻害剤を投与しても近赤外蛍光強度に変化が認められず、本研究により新たに作出した遺伝子プローブは、in vivoでの活性評価には応用できないことが明らかとなった。現在、LC3遺伝子を利用しない新たな近赤外蛍光プローブの設計に取り組んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度における研究により、近赤外蛍光タンパク質で標識した新規遺伝子プローブ(miRFP720-LC3-miRFP670-FLAGx3)を作出し、培養細胞レベルにおいてはオートファジー活性の定量評価に利用できることを確認した。さらに、各種AAVベクターにより当プローブ遺伝子をマウスの肝臓、もしくは、脳組織に選択的に導入し、マウス体外からプローブ由来の近赤外蛍光を検出することにも成功した。しかし、オートファジー活性化剤や阻害剤の投与によりオートファジー活性を正負に制御したマウスにおいて、プローブ由来の蛍光強度の変動を検出することはできなかった。本年度の第一課題に挙げていたin vivoオートファジー活性評価系を構築できなかった点で、本研究は当初の計画から少し遅れていると評価せざるを得ない。しかし、AAVベクターを用いたマウスへの遺伝子導入技術や、IVIS spectrumによる近赤外蛍光イメージング技術など、研究計画の遂行に必要不可欠な実験技術については適宜改変し、最適な実験条件を設定することができた。特に、マウス個体の近赤外蛍光イメージング実験においては、使用するマウスの系統や、2種のmiRFP由来の蛍光を個別に定量検出するための撮影条件について詳細に検討することができた。本年度に最適化したこれらの実験条件を用いることで、次年度以降、円滑に研究を進められると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度における研究により、かねてから設計していた遺伝子プローブ(miRFP720-LC3-miRFP670-FLAGx3)はin vivoイメージングには応用できないことが明らかとなった。この原因として、マウス組織にプローブ遺伝子を過剰発現させた際に、miRFP720-LC3タンパク質が十分に脂質修飾されず、オートファゴソームに取り込まれない可能性を想定している。そこで、本年度においては、プローブのコアとなる分解基質フラグメントを、現在用いているLC3から、より基質性が高いと考えられる人工配列に変更した別のプローブを新たに作出する計画である。改変遺伝子プローブを作出でき次第、AAVベクターを用いてマウスに導入し、近赤外蛍光イメージングによりオートファジー活性を定量評価する実験系を確立する。活性評価系を構築した後、マウスの肝臓、及び、脳組織におけるオートファジー活性の日内変動についてデータを取得する。その後、in vitroのスクリーニング試験によりオートファジー誘導活性を見出した4種の食品成分(イソラムネチン・クリソエリオール・2,2’,4’-トリヒドロキシカルコン・ゼルンボン)をマウスに経口投与し、in vivoレベルにおいてもオートファジーを活性化できるかを検証する。最後に、肝臓組織におけるオートファジー活性が異なる複数のマウスから血液を採取し、質量分析装置(CE-TOF/MS、LC-QqQ-MS/MS、GC-MS)を用いて内因性低分子化合物を網羅分析し、多変量解析によりオートファジー活性と相関して血中に分泌される化合物イオンを同定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
<理由> 令和3年3月に納品となり、支払いが完了していないため。 <計画> 令和3年4月に支払いが完了する予定である。
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