研究課題
本研究では非アルコール性脂肪肝炎(NASH)病態の線維化発症に関与するマクロファージの役割を明らかにすることを目的とした。前年度までにマクロファージ周囲から線維が進展することを組織学的に観察できる、線維化始発点可視化モデルとなるNASH線維化モデル動物を確立した。iHFC diet摂取A/Jマウスでは肝組織学的にスカベンジャーレセプターCD204を発現するマクロファージが余剰のコレステロールなどを貪食後、泡沫化し、病態特異的マクロファージとして周囲の細胞とinteractionしながらマクロファージ近傍から細胞周囲性の線維の進展を示す。このマクロファージ活性化をNASH肝線維化病態の1つの指標として、NASH線維化を阻害する天然化合物をスクリーニングしたところ、ベルベリンがマクロファージ集簇を抑制し、NASHにおける脂肪変性や炎症所見を低減することなく、線維化病態のみの発症抑制効果を示した。さらに、ベルベリンによる肝線維化抑制経路として、Wnt/βカテニン経路の阻害を考慮したが、組織学的にβカテニンの蓄積や核内移行に顕著な差はみられなかった。また、線維芽細胞のアポトーシスもみられなかった。その一方で、マクロファージが分泌するサイトカインであるTGF-BはmRNAレベルで低下しているものの線維化病態群とベルベリン処置群間で有意な差はみられなかった。ベルベリンが肝臓内脂質の排出を促進し、マクロファージ自体の動員を減少させる可能性を考え、肝臓中のコレステロール量を測定したが、ベルベリンによる有意なコレステロール低下作用はみられなかった。以上より、ベルベリンによる肝線維化発症阻害については今後さらなる機序解析が必要である。
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