研究課題/領域番号 |
20K19677
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
天野 絵梨 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 助教 (20866975)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | マンノース / 糖尿病 / インスリン感受性 |
研究実績の概要 |
近年、網羅的解析による代謝マーカーの検索にてグルコースのエピマーであるマンノースは糖尿病発症予測因子として注目されている。また高度肥満非糖尿病患者では、肝臓でのマンノース利用障害が示唆され、空腹時血中マンノースは肥満と独立してインスリン感受性と負に相関している。申請者は糖尿病患者では空腹時血中マンノースが肥満と独立してインスリン感受性と負に相関することを明らかにした。これらの結果は糖尿病におけるマンノース代謝障害を示唆するが、その詳細は明らかでない。 これまで、マンノース代謝に関わる酵素である hexokinase 1(HK1)、hexokinase 2(HK2)、glucokinase (GK)、phosphomannomutase 1(PMM1)、GDP-mannose pyrophosphorylase A (GMPPA)を肝組織検体でRT-PCRを施行し HK1、HK2、GK、PMM1、GMPPAの発現を比較、肝組織ホモジネートでWestern blotを施行しHK1、HK2、GKの発現を評価した。RT-PCRではHK1についてDM群で有意な発現増加を認めたが、HK2、GK、PMM1、GMPPAに関しては有意差を認めず、Western blotではDM群でGKの発現量増加が見られた。 今回、9週齢雄のWister ratをコントロールとして、糖尿病モデルとしてGK ratを用い24時間絶食とし、肝組織ホモジネートについて0.5mMグルコース存在下と50mM グルコース存在下のG6P産生速度を測定しHK、GKそれぞれの活性測定を行なった。Wister rat(体重 211g、血糖 90mg/dL)ではHK 3.72U/g、 GK 14.38U/gであり、GK rat(体重 239g、血糖 173mg/dL)ではHK 2.39U/g、 GK 19.45U/gであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の流行による臨床業務増加によって時間が制限されたためでなく、実験補助をいただく技術補佐員の人手が減少したため。 HK、GKの酵素活性測定を行うにあたり、肝組織ホモジナイズの方法、assay bufferの組成、酵素反応量の調整に難渋、測定が可能となるまでに時間を要したため。
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今後の研究の推進方策 |
肝組織ホモジネートにおけるHK、GKの酵素活性の評価に関しては、令和2年度の活性測定が1回の結果のみとなっており、複数検体での評価を行い、コントロール群と糖尿病群での有意差の有無につき評価する。また、マンノース代謝での代謝産物含量の評価として、絶食により肝グリコーゲンを枯渇させグリコーゲン分解によるマンノース放出を抑制した状態で肝潅流を行い、灌流前後でのマンノース濃度の減少や肝組織中のG6P、M6P含量を酵素学的方法で測定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験進捗がやや遅れているためである。肥満モデルとして肥満モデルを用いた実験として、Wistar ratを高脂肪食[high fat diet (HFD)](脂肪エネルギー比率60% 、5.2kcal/g)で4週間飼育した群と、普通食(脂肪エネルギー比率10% 、3.8kcal/g)群とし、糖尿病モデルを用いた実験と同様に空腹時のマンノース濃度やマンノース代謝関連酵素の評価を行い、肥満状態における肝臓でのマンノース利用障害の詳細を検討する。
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