研究課題/領域番号 |
20K19685
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
木村 篤史 昭和大学, 大学共同利用機関等の部局等, 兼任講師 (10840259)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / アミロイドβ蛋白 / ミトコンドリア / オリゴマー / ビタミンB12 / 抗酸化作用 / Voxel-Based Morphometry / MRI |
研究実績の概要 |
アルツハイマー病の主要因子であるアミロイドβは凝集体を生成し脳内蓄積するが、その中間産物であるオリゴマーは特に強い神経毒性を誘導し、オリゴマー仮説として注目されている。我々はビタミンB12がこのアミロイドβオリゴマーの毒性を抑制することを見出した。本研究では、アルツハイマー病を対象としビタミンB12による神経細胞毒性の緩和作用のメカニズムを解明し、進行抑制薬としての可能性を探求している。 本年度は、まず基礎実験では昨年度に引き続きSH-SY5Y神経細胞を用いたアミロイドβオリゴマー誘発性神経細胞障害モデルにおいて、ビタミンB12の毒性抑制機序について検討した。焦点は主に酸化ストレスであり、細胞膜などの複数の部位で抗酸化作用を示すことで、神経細胞の健全性維持に寄与することが明らかになってきた。また臨床では蓄積した認知症外来におけるデータ整理と解析を進めた。 MRIの高解像度T1強調画像を用いたVBM(Voxel-Based Morphometry)により、記憶関連領域を中心とした灰白質体積について統計解析を行った。またこれにSBM(Surface-Based Morphometry)という手法を組み入れ、皮質厚や皮質表面積、脳回皺裂などの脳表微細構造について検定を行った。これらの成果は、日本神経学会主催の第64回日本神経学会学術大会で「Vitamin B12 may inhibit the neurotoxicity of Amyloid beta oligomers and protect memory function」というタイトルで採択され、演題発表予定である。また、SBMによる詳細な構造画像の情報を用いて、アルツハイマー病の背景病理の多様性に応じた有効性の差異についてサブグループ解析も含め検討をしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
神経細胞モデルを用いた基礎実験は、概ね計画通りデータを得ており、機序解明のための追加の実験を施行している。臨床面においても概ね予定患者数を得たため、現在は論文化に向けた解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究から、ビタミンB12がアミロイドβオリゴマー神経細胞毒性からの保護作用が示唆され、記憶関連領域の脳微細構造との関連が疑われた。その機序について機能学・形態学的な検討を行うとともに、サブグループ解析の結果を含め、研究成果を査読付き論文に投稿見込みである。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響により予定していた機器・試薬等の納入が遅延し、一部未使用となったため、それに伴う経費を繰り越しした。繰り越した経費については、前年度に予定の解析用PC・ソフトウェアのライセンス料金、及びアミロイドβ1-42と実験用試薬に充てる。
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