研究課題/領域番号 |
20K19686
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
小林 正樹 東京理科大学, 薬学部生命創薬科学科, 助教 (30795612)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | カロリー制限 / 白色脂肪組織 / ミトコンドリア / レトログレードシグナル |
研究実績の概要 |
カロリー制限(CR: Caloric Restriction)の作用機構を模倣することは、健康寿命実現への有力な戦略である。申請者らは、CRが白色脂肪組織(WAT; White Adipose Tissue)においてミトコンドリア機能を改善すること、ミトコンドリア関連因子MIPEPとPGC-1αを誘導することを明らかとしてきた。さらにこの両者の共過剰発現は、ミトコンドリア機能変化に加え、転写レベルでの脂肪細胞分化の抑制という細胞の運命決定に影響を及ぼした。以上より申請者は、CRにより誘導される両因子がミトコンドリア変化を起点とする核内制御、すなわち「レトログレードシグナル」を介して、WATの質を改善するという仮説に至った。本研究では、両因子の共過剰発現細胞をより詳細に解析した上で、このシグナルに関与する因子の同定とそのWATの質への寄与を細胞・動物レベルで検証する。これにより、本シグナルを健康長寿実現に向けた新たなCR模倣戦略の標的として提案していく。 本年度では、共過剰発現細胞の形質変化について、MIPEPとPGC-1αの各単独過剰発現細胞と比較解析することで、以下に示す新たな知見を得ることができた。 ・電子顕微鏡によりミトコンドリア形態を観察したところ、単独過剰発現細胞ではやや異常な形態のミトコンドリアが見られたのに対し、共過剰発現細胞ではそのような形態のものは観察されなかった。 ・共過剰発現細胞では、一部の熱産生関連遺伝子の発現が亢進した。これは各単独過剰発現細胞では示されなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本計画においてレトログレードシグナルモデルと見なしている、共過剰発現細胞の形質変化については順調に知見を得ることができたが、レトログレードシグナル因子の評価については、新型コロナウイルス 感染拡大の影響もあり、本年度では着手するには至らなかった。以上より、当該年度の研究計画の進捗はやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
共過剰発現細胞における既知のレトログレードシグナル因子の変動を早急に解析する。加えて、網羅的な遺伝子発現解析が可能なRNA-seq解析を行い、変動する遺伝子群を同定する。これをパスウェイ解析にかけ、その上流の転写因子の予測を試みる。今年度では動物レベルでの解析も計画の一部となっていることから、動物レベルの解析の要となる実験手法であるアデノ随伴ウイルスベクターの脂肪組織への導入も検討する。
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