運動は、健康の維持・増進だけでなく、糖尿病などの生活習慣病の予防・改善に有効である。そのため、糖尿病の予防・改善のための有効な様々な運動指針が示されており、推奨される運動量や運動継続時間が示されている。しかし、運動タイミングに関する言及はなされていない。一方、糖耐能は日内変動を有しており、朝に比較して夕に低下している。耐糖能の低下に寄与するインスリン感受性やグルコースに対するβ細胞の反応性は、朝食時に比べて夕食時に低下している。それゆえ、運動のタイミングにおける糖代謝への影響は異なる可能性がある。そこで、本研究では朝または夕方の短期間持久性運動介入が24時間の血糖値変動に及ぼす影響について検討することを目的とした。 健康な若年男性12名を対象に2つの異なる運動実施時間帯(朝試行[09:00~11:00]および夕方試行[16:00~18:00])において最大酸素摂取量の60%の強度で60分間のトレッドミル運動を実施した。本研究は、1週間(3回/週)の短期間の持久性運動介入であり、各試行は2週間以上の間隔をあけてランダムクロスオーバー試験で実施した。各試行の24時間の血糖値変動を評価するため、持続血糖測定器を用いた。 朝または夕の運動介入後の24時間血糖値変動において、夕の運動後において朝の運動後と比較して穏やかな血糖値変動が示された。また、それぞれの曲線下面積を算出して検討した結果、夕の運動介入が朝の運動介入に比較して有意に低い値が示された。さらに、運動介入後1週間の1日ごとの24時間血糖値変動の曲線下面積を算出して検討した結果、運動介入後の4日目と6日目において夕の運動で朝の運動に比べて低い傾向および有意に低い値が認められた。これらのことから、夕の持久性運動は、朝の持久性運動に比較して日中の血糖値コントロールのためにより有効であり、その効果は1週間ほど持続することが示された。
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