本研究では、脛骨神経の生存・修復因子のクロストークおよび退行因子(アポトーシスと酸化ストレス)の加齢に伴う動態を生化学的に解析し、退行を網羅的に検証した。 神経修復促進関連タンパク質であるBDNF(脳由来神経栄養因子)は、高齢期(90週齢および100週齢)の発現量が他の週齢(20週齢、50週齢および70週齢)と比較して有意に低下し、同様に代謝促進関連タンパク質であるnNOS発現量も高齢期(100週齢)が他の週齢と比較して有意に減少した。一方、神経退行関連タンパク質であるIL-6は、高齢期(90週齢および100週齢)の発現量が他の週齢(20週齢、50週齢および70週齢)と比較して有意に増加した。 さらに、小胞体ストレス応答関連タンパク質であるGRP78、elF2αおよびPDIは、100週齢の発現量が他の週齢と比較して有意に減少した。アポトーシス関連タンパク質であるCaspase-3は、高齢期(90週齢および100週齢)の発現量が他の週齢(20週齢、50週齢および70週齢)と比較して有意に増加した。 以上の結果から、自然加齢による中齢期までは、変性タンパク質の増加に対して、小胞体ストレス応答タンパク質による修復が遂行されることが考えられる。一方、中齢期以降は酸化ストレス増加に対して小胞体ストレス応答関連タンパク質の発現が減少したことにより、修復が促進されず、変性タンパク質の蓄積が増加することが考えられた。さらに、炎症性サイトカインの発現増加により、変性タンパク質の増加と傷害が増加し、アポトーシスが促進されることが考えられた。 脛骨神経のサンプルス数が非常に多く、生化学的解析に時間を要したため、骨格筋の生化学的解析に関しては現在進行中である。
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