①日中は交感神経が亢進し血圧が上昇すること、夜間は副交感神経が亢進し血圧が低下することが知られている。以上のことから、脈絡膜循環動態と脈絡膜形態の日内変動について、laser speckle flowgraphy(LSFG)と深部強調画像光干渉断層計(EDI-OCT)を用いて検討した。その結果、日中は夜間と比較して黄斑部の脈絡膜血流速度(MBR)が上昇し、中心窩下脈絡膜厚(SCT)は減少した。 ②冬は夏と比べて交感神経が優位となるため眼圧や血圧などが上昇することから、LSFGとEDI-OCTを用いて脈絡膜循環動態と脈絡膜形態の季節変動について検討した。その結果、冬は夏と比較して眼圧や血圧などの上昇に伴いMBRは上昇し、SCTは減少した。 ③正常月経周期の黄体期中期は卵胞期後期に比べて交感神経が亢進し、血圧が上昇することが報告されていることから、黄体期中期と卵胞期後期にLSFGとEDI-OCTを実施した。その結果、黄体期中期は卵胞期後期と比較して全身の循環動態の上昇に伴いMBRは上昇し、SCTは減少した。 ④低い外気温に暴露する冷却ストレスにより人体では主に熱損失に対して恒常性を維持するために交感神経を活性化させる反応を示すことから、寒冷刺激試験を行い、LSFGとEDI-OCTを用いて脈絡膜循環動態と脈絡膜形態の経時変化を検討した。その結果、寒冷刺激試験直後に全身の循環動態の上昇に伴いMBRは上昇し、SCTは減少した。 以上①~④の検討から、交感神経が亢進することで全身の循環動態が上昇し、それに伴い脈絡膜循環動態(MBR)は上昇し、脈絡膜形態(SCT)が減少することが示唆された。これらのことから、両機器によって得られた脈絡膜所見を用いた他覚的なストレス評価法の有用性が示唆された。
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