研究実績の概要 |
本研究の目的は、地域在住高齢者を対象に、頭部MRI検査、認知機能検査を実施し、脳形態・脳機能を総合的に評価できるモデルを構築し、認知症の発症前段階を検出するモデルを開発することである。2022年度は、データ収集及び、収集したデータの解析を実施した。対象は、宮崎県延岡市の70歳以上の高齢者を対象に、電話による認知機能調査を実施し、1764名の検査結果を得た。その中で認知機能障害(MCI)が疑われた449名から、約70名に精査のための頭部MRI検査の案内を送付し、希望された67名に頭部MRI検査を実施した。比較対照群として、認知機能正常群の1314名からランダムに選択して、精査のための頭部MRI検査の案内を送付し、希望された84名に頭部MRI検査を実施した。 収集したデータにて、データ解析を実施した。MCI群は、認知機能正常群に比して、有意に総海馬体積が小さかった(MCI, 6357mm3; 正常群,6809mm3, p=0.043)。拡散テンソル画像のFractional Anisotropy値はMCI群で有意に小さく、白質の障害が示唆された(MCI, 0.4; 正常群,0.5, p=0.002)。大脳白質病変の体積はMCI群で有意に大きかった(MCI, 21.3mL; 正常群,11.7mL, p=0.001)。Arterial Spin Labelingを用いた、全灰白質の脳血流値(ml/100g/min)はMCI群で有意に低かった(MCI, 66.2; 正常群,75.7, p=0.038)。上記の結果を踏まえて、認知機能障害と関連があった変数に対して、多変量解析、認知機能検査スコアとの相関解析などを追加で実施する。
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