研究課題/領域番号 |
20K19708
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
渡邊 龍憲 広島大学, 医系科学研究科(保), 助教 (20868400)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 視覚運動制御 / 加齢 / 脳機能ネットワーク / 脳律動 |
研究実績の概要 |
本研究は、視覚情報を用いて動作を精確に行う機能の加齢低下に関わる脳機能ネットワークを解明することを目的としている。 本年度は、視覚情報を用いた精確な動作の認知的な制御に関わる脳機能ネットワークを若年健常者を対象に検証した。具体的には、トップダウン型の注意機能に関わると報告されている、中前頭から生じるシータ律動と後頭部から生じるガンマ律動の視覚運動制御機能への寄与について検証した。 実験協力者は、PC画面に表示される視覚情報を用いて発揮筋力を調整する課題を行った。PC画面には、実験協力者自身の発揮筋力とターゲットを呈示し、実験協力者には、できるだけ精確に発揮筋力をターゲットに合わせるように指示した。発揮筋力に関する視覚情報の視角を変化させることで、課題の難易度を操作した。 その結果、より精確な視覚運動制御が要求された場合に、中前頭シータ律動が増強することが明らかとなった。また、この中前頭シータ律動は運動関連領野で生じるベータ帯律動と視覚運動制御の関係性をモデレートすることが明らかとなった。具体的には、中前頭シータ律動が高い場合には、ベータ帯律動と視覚運動制御の関連性が低下した。一方、後頭部から生じるガンマ律動については、視覚運動制御に寄与しない可能性が示唆された。 これらの結果より、中前頭シータ律動が視覚情報を用いた動作のトップダウン型の制御に関わる可能性が示唆された。現在、これらの脳律動に加齢が与える影響を検証している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
健常若年者を対象とした研究が予定通りに行われ、査読付き雑誌に採択された。現在、高齢者のリクルートを行っており、順調に実験が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に得られた結果について、高齢者を対象に検証する。具体的には、加齢が視覚運動制御課題実施中の中前頭シータ律動に与える影響の解明を目指す。さらに、この中前頭シータ律動と運動関連領野で生じるベータ帯律動やその他の脳律動との関連性(ネットワーク)について検証を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染症の拡大により学会がウェブ開催となり学会参加に関わる交通費がかからなかった。また、実験補助を依頼することも困難であった(人件費)。 雑誌のオープンアクセス化に伴う論文投稿料や掲載料の高額化が生じているため、次年度は、これらの費用に研究費を充てると共に積極的に学会等に参加することで自身の研究分野における最新の知見を得る。
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