本研究では、朝食のタンパク質摂取不足が筋肥大を抑制する分子メカニズムの解明を目的としている。これまでにマウスを1日2回食の時間制限給餌(それぞれそ活動期初期と活動期後期の2回)にて飼育し、各食餌のタンパク質量を変化させた場合、活動期初期に低タンパク質食を摂取したマウスでは活動期後期に低タンパク質食を摂取したマウスに比べ、協働筋切除による筋肥大が抑制されることを見つけていた。次にこの摂取タイミングによる影響に概日時計が関与するかを調べるため、時計遺伝子の一つであるClockに変異の入ったClock mutantマウスにて検討した結果、Clock mutantマウスでは摂取タイミングの影響はみられず概日時計の関与が示唆されていた。しかし、全身に変異のあるClock mutantマウスの場合、活動リズムの変化も伴うため、活動期初期のタンパク質不足が筋肥大を抑制されるメカニズムとして、活動量の変化の関与を否定できなかった。そこで、筋特異的BMAL1ノックアウトマウスを用いて同様の検討を行った。筋特異的BMAL1ノックアウトマウスは正常な活動リズムを示す一方で、骨格筋における時計遺伝子のネガティブフィードバックループは減弱している。本マウスにおいても活動期初期の低タンパク質食摂取が筋肥大を抑制しなかったことから、タンパク質の摂取タイミングによる筋肥大への影響は活動リズムとは独立して骨格筋の概日時計が関与している可能性が考えられた。
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