研究課題/領域番号 |
20K19712
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
林 史和 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (30723291)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 非アルコール性脂肪性肝疾患 / メタボリックシンドローム / 生活習慣病 / 東日本大震災 |
研究実績の概要 |
東日本大震災に伴う原発事故後の避難区域等を対象とした福島県県民健康調査において、脂質異常の有病率は増加しており、その予防と対策は避難区域等住民の健康を考える上で重要である。しかしながら、脂質異常発症への心理社会学的要因の関連は未だ不明である。そこで、脂質異常発症と心理社会学的要因の関連を明らかにすることを目的とした。 本検討では、震災当時に避難区域等に住民登録があり、2011年度に健康診査を受診、かつ「こころの健康度・生活習慣に関する調査」に回答した人のうち、2017年度まで脂質異常発症を追跡した40歳以上90歳未満の人10,106名(男性4,383名)を対象とした。解析には年齢、性別、BMI、脂質関連項目、避難所・仮設住宅の経験、仕事の変化、放射線に対する認識、ケスラー6項目心理的苦痛スケールスコア、心的外傷後ストレス障害チェックリスト、生活習慣(運動、飲酒、喫煙)、睡眠満足度等を用いた。 追跡期間中、脂質異常を発症した人は4,451人(44.0%)だった。結果として、肥満、過去の喫煙、現在の喫煙、避難所・仮設住宅の経験、仕事の変化は、脂質異常の発症リスクを増大させた。一方、やせ、週2回以上の運動習慣、2合未満の飲酒習慣、2合以上の飲酒習慣は、脂質異常の発症リスクを低下させた。 避難区域等住民の脂質異常発症の予防には、肥満、喫煙、運動に関する介入が重要であることを示唆した。また、避難経験があると脂質異常の発症リスクが高くなる可能性も示唆され、より一層の注意を払う必要があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
初年度は、新型コロナウィルスの流行により、福島県避難区域住民に対し、濃厚接触を伴う危険のある検査を行うのが難しい状況であった。そこで、福島県避難区域住民の生活習慣病の予防に資することを目的とする本研究では、脂肪肝との関連性の深い脂質異常症に注目し、検討を行った。
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今後の研究の推進方策 |
東日本大震災時の福島県の避難区域の一部市町村に居住する肝炎(B・C型肝炎ウイルス等)の背景の無い者を対象に、肝硬度測定装置を用いて肝臓脂肪量の指標を測定し、健常者に潜在する脂肪肝の有病率を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度は、新型コロナウィルスの流行により、福島県避難区域住民に対し、濃厚接触を伴う危険のある検査を行うのが難しい状況であった。そこで、福島県避難区域住民の生活習慣病の予防に資することを目的とする本研究では、脂肪肝との関連性の深い脂質異常症に注目し、解析を行い、得られた結果をオンライン総会にて発表した。 今年度は、東日本大震災時の福島県の避難区域の一部市町村に居住する肝炎(B・C型肝炎ウイルス等)の背景の無い者を対象に、肝硬度測定装置を用いて肝臓脂肪量の指標を測定し、健常者に潜在する脂肪肝の有病率を明らかにする。
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