研究実績の概要 |
2011年の東日本大震災の際に避難した福島県避難区域等住民では、震災後に肥満や生活習慣病が増加しており、脂肪肝の増加が予想される。そこで、福島県避難区域等住民の脂肪肝と心理社会学的要因の関連を明らかにすることを目的に検討を行った。対象者は、N町の2021年度健康診断に参加した20歳以上65歳未満の男性261名である。このうち、肝疾患の既往がなく、同意が得られ、超音波エラストグラフィで適切に評価できたと判断した127名を、脂肪肝の有無で2群に分け比較を行った。本研究では62名(48.8%)が脂肪肝群と判定された。結果として、Body mass index、脂質異常が、脂肪肝と有意な正の関連を示した。一方、ほぼ毎日笑うことは、脂肪肝と有意な負の関連を示した。本研究は、笑いの様な心理的要因が、脂肪肝に影響を与えることを示唆した。 次に、東日本大震災後の福島県避難区域における低密度リポ蛋白高コレステロール血症(高LDL血症)、高密度リポ蛋白低コレステロール血症(低HDL血症)、高トリグリセリド血症(高TG血症)の発生と、生活習慣および社会心理的要因の関係を明らかにすることを目的に、震災当時に避難区域等に住民登録があり、2011年度に健康診査を受診、かつこころの健康度・生活習慣に関する調査に回答した非高LDL血症11,274名、非低HDL血症16,581名、非高TG血症12,653名を対象に、2017年度までのデータを前向きに解析した。結果として、避難経験は、高LDL血症、低HDL血症、高TG血症の発生と正の関連を示した。逆に、中高程度の食事多様性スコアは、高TG血症の発生と負の関連を示した。この結果は、災害による避難者の脂質異常症の発生を予防するために、生活習慣の継続的な改善の実施と共に、災害による影響を払しょくするための取り組みを行う必要性を示した。
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