研究課題/領域番号 |
20K19714
|
研究機関 | 島根県立大学 |
研究代表者 |
多々納 詩織 (福田フクダ) 島根県立大学, 看護栄養学部, 助教 (50825198)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | FGF23 / klotho / 成長期 / リン / カルシウム |
研究実績の概要 |
過剰なリン摂取は血中リン濃度の上昇を引き起こし、異所性石灰化や骨粗鬆症等の早期老化様病変の原因となることが明らかになりつつある。本研究は、近年増加傾向にある慢性腎臓病について、成長期における過剰なリン摂取時のカルシウム摂取量の違いが、発育やFGF23/α-klothoシグナルに及ぼす影響を明らかにし、成長期から将来の慢性腎臓病発症を予防する新しい栄養管理法の確立を目指すものである。離乳直後の3週齢C57BL/6Jマウスを用いた検討において、食餌中のリン・カルシウム濃度の違いが、血中リン濃度やFGF23濃度、腎臓におけるFGF23/α-klothoシグナル関連遺伝子発現、腎臓石灰化に影響することがわかった。このことから、成長期における過剰な食餌性リン摂取時のカルシウム摂取量の増加は、過剰なリン負荷による悪影響を増強させることが示唆され、成長期における適切なリン・カルシウム摂取管理の重要性が示された。2021年度は、具体的なメカニズムを明らかにすることを目的とし、成長期の過剰なリン摂取時のカルシウム摂取量の違いが、腎臓や骨におけるリン・カルシウム代謝関連遺伝子やエピゲノム変化関連遺伝子のmRNA発現に及ぼす影響を検討した。その結果、リン代謝の中心的役割を担うα-klotho が発現している腎臓やFGF23 の産生臓器である骨において上記遺伝子のmRNA発現の変化が確認できた。現在、DNAサンプルを用いることにより、より詳細なエピゲノム変化を検討している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、成長期の過剰なリン摂取時のカルシウム摂取量の違いがエピゲノム変化に及ぼす影響を明らかにすることを目指していた。腎臓や骨におけるリン・カルシウム代謝関連遺伝子やエピゲノム変化関連遺伝子のmRNA発現変化の結果から、DNAサンプルを用いたエピゲノム変化の検討につなげることができた。以上のことを総合して、おおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
成長期における過剰な食餌性リン摂取時のカルシウム摂取量の増加は、腎臓におけるリン・カルシウム代謝異常を引き起こし、過剰なリン負荷による悪影響を増強させることを明らかにした。また、腎臓や骨におけるリン・カルシウム代謝関連遺伝子やエピゲノム変化関連遺伝子のmRNA発現に関する結果が得られた。今後は、成長期の過剰なリン摂取時のカルシウム摂取量の違いが将来の慢性腎臓病発症リスクに及ぼす影響を明らかにするために、リン・カルシウム代謝異常が生じた成長期以降に通常食を投与し、生化学解析や遺伝子発現解析により、経時的にリン・カルシウム代謝を検証する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
おおむね順調に進展したため、マウスや試薬等の購入費が少なくなったこと、現在進めているエピゲノム変化を検討するための解析費が必要となることから2022年度に使用する予定である。また、参加予定の学会が誌上開催となったため、旅費等が不要となった。2022年度は次年度請求分とあわせて、マウスや試薬などの購入費、学会旅費などに使用する予定である。
|