過剰なリン摂取は血中リン濃度の上昇を引き起こし、異所性石灰化や骨粗鬆症等の早期老化様病変の原因となることが明らかになりつつある。本研究は、近年増加傾向にある慢性腎臓病について、成長期における過剰なリン摂取時のカルシウム摂取量の違いが、発育やFGF23/α-klothoシグナルに及ぼす影響を明らかにし、成長期から将来の慢性腎臓病発症を予防する新しい栄養管理法の確立を目指すものである。2020、2021年度において、成長期マウスの食餌中のリン・カルシウム濃度の違いが、血中リン濃度やFGF23濃度、腎臓におけるFGF23/α-klothoシグナル関連遺伝子発現、腎臓石灰化に及ぼす影響が異なることが明らかとなった。このことから、成長期における過剰な食餌性リン摂取時のカルシウム摂取量の増加は、過剰なリン負荷による悪影響を増強させることが示唆され、成長期における適切なリン・カルシウム摂取管理の重要性が示された。具体的なメカニズムを明らかにするために、腎臓や骨におけるエピゲノム変化を検討しているが、現時点ではターゲットの特定はできていないため、引き続き検討を行っている。また、成長期の過剰なリン摂取時のカルシウム摂取量の違いが将来の慢性腎臓病発症リスクや寿命に及ぼす影響を明らかにするために、高齢期マウスを用いた検討を行っている。今後、本研究成果をまとめる予定である。
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