不規則な時間での食事が継続した場合、一般的には体内時計の破綻を引き起こし、生活習慣病の発症に関連すると考えられている。これまでのRNA発現に着目した解析の結果から体内時計機構が直接制御している栄養素輸送トランスポーターは少ないことが明らかとなっている。そのため概日リズムの破綻が膜タンパク質の細胞内動態制御のいずれの段階で影響するのかについては不明な点が多い。 昨年度までに、長期間夜食を継続して摂食したマウスでは肝臓内に脂質の沈着が認められることを明らかとした。本モデルマウスにおける時計遺伝子の発現量を測定したところ、時計遺伝子の発現周期が8~12時間ほどずれていた。特に肝臓内のPPARγの発現リズムはRNA、タンパク質いずれも発現リズムが消失し、いずれの時刻も高い値を示していた。 PPARγの発現リズムが消失した原因は肝臓内のマイクロRNAの発現変化が関与していることを明らかとした。miRNA-27の発現は正常摂食条件では日内変動を示す一方で、不規則摂食マウスにおいてはその日内変動が消失していた。また、細胞にmiRNA-27をトランスフェクションするとPPARγの発現増加や脂質取り込みが過剰に起こることを見出した。 miRNA-27は血清中エクソソームからも検出することができる。これは不規則な食生活を継続した際に起こる時計の乱れや、脂肪肝を発見できるバイオマーカーになりうると想定される。本研究を通じて、不規則な食生活に伴う脂質異常症について、遺伝子の日内変動に着目した新たな原因や新たなバイオマーカーを見出した。これらの発見は、24時間社会によって増加している生活リズム破綻による生活習慣病に対する新規治療戦略の発展に貢献できると期待される。
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