本研究では、普及と実装科学(D&I)において、産業保健領域におけるエビデンスに基づく介入の実施方法を検討することを目的として、文献調査とアンケート調査を行った。その結果、経営層の方針や従業員の理解などの内的セッティングや個人特性が企業における阻害・促進要因として重要であり、組織準備性の尺度開発が必要であることが示唆された。そこで、組織準備性の英訳版から日本語版を作成し、バックトランスレーションを行って翻訳家と産業保健専門研究者による検討を経て、3500名の人事労務担当者を対象に調査を実施した。統計学的に内的妥当性を検討したほか、確認的因子分析と探索的因子分析を行って、構造的妥当性を検証した。結果として、高い内的妥当性および構造的妥当性が確認され、本調査票を用いて組織準備性の段階に応じた介入が実施できることが期待された。本研究は、産業保健領域におけるエビデンスに基づく介入の実施方法に関する知識体系を構築することに寄与し、組織準備性に着目した実装戦略の効果的な展開につながることが期待される。今後の研究において、本調査票を用いた実践的な介入研究が求められる。
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