研究課題/領域番号 |
20K19725
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研究機関 | 金城学院大学 |
研究代表者 |
薗田 邦博 金城学院大学, 生活環境学部, 准教授 (80454338)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 非アルコール性脂肪性肝炎 / 食事療法 / 亜硝酸塩 / 一酸化窒素 / 炎症 / 酸化ストレス |
研究実績の概要 |
非アルコール性脂肪性肝炎は、肝硬変や肝がんに進行するリスクが高く臨床上重要な疾患とされている。しかし、病態に不明な点が多く、薬物療法や食事療法も確立されていないのが現状である。非アルコール性脂肪性肝炎の発症には酸化ストレスや炎症の増大が関与していることが報告されており病態が進行すると脂肪肝から肝線維化へと進行する。一方で野菜や果物に含まれる硝酸塩/亜硝酸塩の経口摂取は心疾患や肺疾患の動物を用いて酸化ストレスや炎症を抑制、線維化への進行を軽減することが報告されていることから非アルコール性脂肪性肝炎についても効果を発揮すると仮説を立てた。本研究では、非アルコール性脂肪性肝炎の病態悪化に対して野菜や果物に豊富に含まれている硝酸塩/亜硝酸塩が与える影響を明らかにすることを目的に研究を遂行している。 本実験では、高脂肪食を与えることで非アルコール性脂肪性肝炎を発症するモデル動物のSHRSP5/Dmcrを用いて、その効果について検討した。動物を①WKY(対象動物)+通常食、②SHRSP5/Dmcr+通常食、③SHRSP5/Dmcr+高脂肪食のみ、④SHRSP5/Dmcr+高脂肪食+亜硝酸塩のグループに分けて8週間飼育した。その後、動脈血圧の測定を行い解剖して肝臓組織と血液を採取した。採取した肝臓組織を用いて病理標本を作製してシリウスレッド染色で線維化の評価を行い、免疫染色(炎症の指標となるCD68を染色)により炎症について評価を行った。 亜硝酸塩の摂取は、高脂肪食のみのグループに比べ有意に血圧を低下させ、高脂肪食摂取に伴う肝臓の線維化と炎症を抑制する効果があることが示唆された。 今後は、線維化の増殖に関与するたんぱく質発現量の測定や酸化ストレスへの影響など亜硝酸塩摂取による抑制メカニズムについて検討を行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
SHRSP5/Dmcrに高脂肪食と亜硝酸塩を与え8週間飼育した結果、高脂肪食のみのグループに比べ亜硝酸塩を摂取させたグループでは肝臓の線維化や炎症を一部抑制することがわかった。しかし、新型コロナウイルスの影響のため予定に比べ動物飼育開始時期が遅れたことから2020年度に予定していた高脂肪食と亜硝酸塩を与え2週間飼育する研究がまだ実施できていない。そこで、2週間の飼育に関しては本年度(2021年度)に実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度に行った研究から高脂肪食よる肝臓の線維化や炎症の発症に対して亜硝酸塩の摂取が抑制効果を発揮することが示唆された。そこで、2021年度と2022年度の研究では炎症の発症に関与する酸化ストレス(TBARS)の増加量やNADPH oxidase、線維化の増加に関わるTGF-βの発現量をたんぱく質(ELISA法)、mRNAレベル(PCR法)で測定していく予定である。また、炎症や線維化進行に関わる一部のたんぱく質やmRNAの発現量は本研究で用いているモデル動物に高脂肪食を2週間与えた時点で顕著に表れることが報告されていることから2週間飼育における亜硝酸塩摂取の影響を評価する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は新型コロナウイルスの影響により、予定していた動物研究(動物飼育)が一部できなかったことから予算に余剰金が生じた。昨年度実施予定だった動物飼育を2021年度に行うため余剰した助成費に関しては予定通り消耗品(動物と餌の購入など)と検査費用に充てる。
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