非アルコール性脂肪性の肝疾患は、高脂肪食摂取により誘導され肝硬変から肝がんへと進行するリスクが高いことから臨床的に重要な疾患である。しかし、病態の発症メカニズムに不明な点も多く、食事療法や薬物療法が確立されていない。そこで本研究では、非アルコール性脂肪性肝炎の病態悪化に対する硝酸塩/亜硝酸塩の経口摂取による影響を食餌誘発性のNASHモデルラット(SHRSP5/Dmcr)を用いて明らかにすることを目的に研究を実施した。 NASHモデルラットへの亜硝酸塩投与は、組織学的に肝臓への脂肪沈着(脂肪肝)は抑制できなかったが、肝臓の線維化進展を抑制した。また、亜硝酸塩を投与することで肝臓の炎症や酸化ストレス増大が抑制されていた。このことから、亜硝酸塩の摂取は炎症や酸化ストレスの増大を抑制した結果、線維化の進展を抑制するものと考えられた。 肝臓の線維化進展には、アンジオテンシン系の活性化が関与していることが報告されていることから、ACE阻害剤であるカプトプリル群を加え研究を実施した。NASHモデル動物に亜硝酸塩またはカプトプリルを処置することにより肝臓で起こる炎症と酸化ストレスの増大を抑制し、線維化への進展を抑制した。亜硝酸塩は、ACE阻害剤と同様にNASHモデル動物の心肥大や血管周囲の線維化を抑制していたことから、レニン-アンジオテンシン系の活性化を抑制することで肝臓の炎症や酸化ストレスの増大を抑制していることが示唆された。 以上の結果から、野菜や果物に含まれている亜硝酸塩の摂取はレニン-アンジオテンシン系の活性化を抑制し、NASHの病態進行を抑制する可能がある。本研究は動物実験であるためヒトのNASHに対する有効性を確認する必要があるが、新たな食事療法の開発に応用できる可能性を示すことができた。
|