本研究では、脂肪細胞と血管内皮細胞との関係を内皮間葉転換(EndMT)に着目して検討する。EndMTは動脈硬化や組織線維化進展の一因と考えられている。End MTについて肥満、とくに脂肪細胞の肥大化が直接的にEndMTを引き起こすリスクとなるのか、さらに食品由来成分によってEndMTを制御できるのかを検討した。脂肪細胞の肥大化が血管内皮細胞のEndMTに及ぼす影響を検討するため、マウス由来線維芽細胞(3T3-L1)を脂肪細胞へと分化誘導した。3T3-L1は分化が進むほど肥大化したことを確認した。脂肪細胞培養液で刺激された血管内皮細胞はCD31減少とSM22α増加および細胞遊走能の増加が認められた。さらに、Erk1/2リン酸化、Snail発現の増加、PAI-1発現の増加を示しEndMTの進展が確認された。肥大化した脂肪細胞からTGF-βの分泌増加を確認したため、TGF-βの阻害剤を添加しEndMTの程度を評価したがTGF-β阻害剤によるEndMT抑制作用は認められなかった。これら脂肪細胞肥大化によるEndMTはエイコサペンタエン酸(EPA)によって抑制された。また高脂肪食摂取糖尿病マウスの腎臓では、EndMTの進展が確認されたがEPA摂取によってEndMT進展が抑制されEPAの腎保護効果が示された。EPA以外の抗EndMT効果を有する食品を探索するために血管内皮細胞を高グルコース培地で培養し食品抽出物を加え血管内皮細胞の変化を観察した。中でも奈良県の特産品である柿の葉の発酵茶抽出エキスにおいてCD31発現減少抑制とSM22α発現増加抑制作用が認められ、細胞遊走能の抑制も認められた。このことから、柿の葉発酵茶抽出エキスは抗EndMT効果を有する可能性が示唆された。
|