研究課題/領域番号 |
20K19739
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
河瀬 康志 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 特任准教授 (90734559)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 公平割当 / 無羨望性 / 多項式時間アルゴリズム / NP困難性 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,複数の意思決定者が関わるようなゲーム理論的状況において,望ましい解を実現する制度の設計や計算するための手法の開発を行うことである.本研究では,組合せ最適化の技法を用いて,制度設計に現れる最適化について構造の解析や効率的に解くためのアルゴリズム設計の研究を行なっている.このような状況においては,どのような公平性や安定性を満たすような解ならば存在して,効率よく発見することできるかを明らかにすることが一つの研究目標となる. 当該年度では主に,ライドシェアにおける公平な割当についてのモデル化を行った.この研究では,複数の目的地の異なるエージェントが乗り物を共有する状況で,どのように別れるのが公平かという問題を扱っている.この問題において,いくつかの公平性や効率性の概念についての関係を明らかにし,それらの条件を満たす解を見つけるための効率的なアルゴリズムの設計を行なった. またそのほかにも,公平割当問題において補助金を用いることができる場合について解析を行なった.絵画や車や家のように分割不可能な財を何人かのエージェントに分ける場合には,一般に無羨望性と呼ばれる公平性を満たす割当は存在するとは限らない.しかし,補助金をうまく与えることで,無羨望性を満たすことができることが知られている.エージェントがもつ効用関数のクラスに応じて,どの程度の補助金があれば無羨望性を満たすことができるかについて解析を行ない,これまで知られていた必要量よりも少ない補助金額の上界を与えることに成功した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究のメインターゲットとして,安定マッチング問題に対する近似安定性と公平割当問題に対する近似公平解の2つの課題を設定していたが,当該年度では後者の課題について一定の成果を得ている.特にライドシェアにおける公平割当問題では,いくつかの自然に現れる公平性や安定性の概念の間の関係を明らかにすることに成功し,効率的なアルゴリズムの設計にも成功している.前者の課題に関してはまだ大きな成果が出ていないが,全体としては概ね順調に進展していると言える.
|
今後の研究の推進方策 |
公平分割問題に関しては,入力が逐次的に来るような状況に対するアルゴリズムの設計を行うことを考えている.このような状況は,フードバンクや腎臓移植,電気自動車の充電スタンドへの割当などに応用をもつ.将来の入力がわからない状況では後から後悔するような割当をしてしまうかもしれないが,なるべく後悔の小さい割当を行うためのメカニズム設計を行う. また,安定マッチング問題に関しては,保育園割当や研究室配属などの現実の問題に現れる制約に対して研究を行う予定である.このような制約下では通常の意味での安定マッチングは存在しないので,何らかの「よい」解をどのように定義し,どのように計算すれば良いかについての研究を行う予定である.
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響により,国際会議がバーチャル開催へと移行したため,旅費としての使用を計画したものの一部を次年度への繰越にした.繰越分はオンラインでの研究打ち合わせなどの活動を円滑に行うためのソフトやハードの購入費として使用する予定である.
|