研究課題/領域番号 |
20K19740
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
河野 友亮 東京工業大学, 情報理工学院, 研究員 (00837586)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 量子論理 / 複数粒子 / 二項関係 / 論理演算子 / エンタングルメント |
研究実績の概要 |
昨年度は、主に2つの方面の成果があった。一つ目は、主にその前年度の研究を進展させた成果であり、二つ目は、研究題目に関連する別の論理体系においての成果があった。 まず一つ目について解説する。作年度はこの研究題目の軸となる部分の、複数観測者に対する論理記号、様相記号を細かく分析、発展させた研究をある程度完成させることができた。量子力学や量子情報理論においては、複数の観測者がそれぞれ個別の粒子を所持しているという状況が重要になってくる。そのような状況において、前回は、観測者に対する新たな論理学的分析の土台が完成したという報告であった。今回は観測者ではなく、粒子部分に関する論理の発展が行われた。通常の抽象量子論理では、複数の粒子の命題を個別に扱うことは、モデルや論理式の単純さから不可能であった。特に、複数粒子で重要であるエンタングルメント等の概念は、明らかに従来の抽象量子論理では扱えなかった。そこで昨年度は、論理の複雑さをおさえつつもこれらのような概念が扱えるようにするという本申請題目の流れにのっとり、論理や二項関係モデルを拡張するという研究を主に行い、成果が得られた。(研究集会SLACS等で発表済み。) 二つ目の成果は、直観主義論理の論理演算子に関する結果である。(Notre Dame Journal of Formal Logicに掲載予定。)直観主義論理の論理演算子は、量子論理の論理演算子とモデルの意味的に対応しており、特に直観主義論理の含意は、量子論理の含意の一つである「観測した後でAが真ならばBが真」と対応している。その論理演算子群を拡張させた演算子において、どのような演算子の組み合わせで論理を構成したら、性質の良い論理が構成できるか、という分類の結果が得られた。この成果は量子論理にも応用が可能であると推察され、今後その研究も行えることも視野に入れている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的は、量子論理に、量子力学上および量子情報理論上重要と思われる多数の様相記号を加え、それらに合った数理論理学上の有用な概念を構成することであった。研究計画書には、それらの概念のうち、主軸となるものを、4~5つほどを挙げていた。前年度の同資料で、これらのうちの1,2個の成果が出たことを報告した。 しかしながら昨年度は、これらのくくりの中では、すでに研究を始めているこの1,2個の概念を発展させるという内容や、それ以前に研究していた様相概念を発展させるという内容が主であり、他の概念を追加するという流れに関してはほとんど発展させることが出来なかった。 よって、前回はおおむね順調に研究が進んでいるとの報告を行ったが、今回は前回の研究の発展と、その派生研究にとどまったと見ることもでき、見方によっては不振とまではいかないもののややペースが鈍化していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
上記の通り、研究は進んでいるとは言え、若干予定よりはずれが生じている。特に、昨年度予定していた、確率やその他の様相概念の分析が遅れており、昨年度はそのことに関して十分な成果は得られなかった。しかしながら、その代わりにより土台的な部分の分析は進んでいるため、このことは今後の研究に別の利益をもたらすと考えられる。 したがって、実際的には研究の方針を大幅に変える必要はなく、前年と同じように、当初の研究手法そのままに進めることを予定している。現状としては、前年の本項目で予定していた確率的な概念を導入した二項関係モデルの構築の一部は出来上がっているので、その上により具体的なモデルや条件を課す分析を行うことを計画している。 また、モデルをより複雑にして更なる別のモデルを得るか、概念ごとにモデルを分けて分析するかという判断についても、特に変更はなく、個別に概念を分けてモデルを構成する方が良いという判断も現状の所変更はしない方が良いと分析している。
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次年度使用額が生じた理由 |
この研究費の申請は、主に国際学会等での旅費での申請であったが、 コロナウイルスの影響で集会はほとんどオンラインであり、旅費使用は無かった。 そのため、支出は主に遠隔集会等のための物品、書籍、論文英文校正に予定より多く使用した。 今年度からは、国際会議も現地で行われることが多くなるため、主に旅費として利用する予定である。
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