研究課題/領域番号 |
20K19741
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
長尾 篤樹 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 助教 (20802622)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 計算量理論 / 領域計算量 / 分岐プログラム / Read-k-time / 充足可能性問題 / 厳密アルゴリズム |
研究実績の概要 |
本研究の目的は分岐プログラムの一回読み制限をさらに緩和した状況下での下界制限の手法を確立する事である.そのために様々な関数を計算する分岐プログラムを考察している. 計算量理論では計算モデルに対する充足性問題を解くアルゴリズムの上界解析の手法が同計算モデルのサイズ下界の手法に応用される例が多く研究されており,本研究でも同様にメモリアクセス回数に制限をもつ分岐プログラムに対する充足性問題を解くアルゴリズムの研究を進めている. その結果,メモリアクセス回数が高々k回である分岐プログラムに対する充足性問題を解くより良いアルゴリズムを構築することに成功し,国際英文誌であるTheory of Computing Systemsにおいて論文の出版を行った.(Atsuki Nagao, Kazuhisa Seto, Junichi Teruyama. "Satisfiability Algorithm for Syntactic Read-k-times Branching Programs." Theory of Computing Systems, 64(8): 1392-1407 (2020)) 本結果を用いることでメモリアクセス回数を高々k回と制限した場合の分岐プログラム下界の解析手法が新たに構築できることが期待される. 一方で,メモリアクセス回数に制限を持つ分岐プログラムの下界解析そのもの関しては対外発表という形での成果は出せていない.チャレンジングな課題であるとはいえ,来年度こそは一本以上の発表をできるよう最善を尽くす予定である. 充足性問題を解くアルゴリズムの上界解析はこの結果移行も継続しているが,下界を直接示した結果はこれまでに発表できていないため,今後は本結果を利用することも含めて下界解析へと取り組んでいく予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
COVID19の影響により国際会議での発表は行えていないものの,k回読み分岐プログラムの充足性問題を解く効率的なアルゴリズムに関する論文を国際英文誌にて出版することができた.本結果の延長となる議論は引き続き行っており,更なる結果を近々投稿予定でもある. 下界解析に関しても議論・研究を進めており,研究計画でも例として挙げた木構造関数値評価問題(Tree Evaluation Problem)に関する新しい知見を他研究者の出版論文から得ている状況である.この他研究者の結果とこれまでの本研究課題の結果との組み合わせを行う事でメモリアクセス数2回制限の分岐プログラム下界を示せるのではないかと期待できる議論を行っている.
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今後の研究の推進方策 |
2020年の成果であったメモリアクセス回数に制限を持つ分岐プログラムの充足可能性問題を解くアルゴリズムの研究は引き続き行う予定であり,より制限を緩和した状況でもより速く解決するアルゴリズムを構築する予定である. 本研究唯一の懸念である下界解析に関しても,現在までの進捗状況で記述した通り,木構造関数値分岐プログラム最新の結果から新たな構想を手に入れることができている.この最新の結果をメモリアクセス数2回制限に応用することで新たな下界解析の手法が構築できることを期待している.
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID19の影響もあり,旅費の計上がまったくできない状況であった.さらに物品購入に関しては出張用の計算機の購入を控えた事に加え,計算機実験に用いる予定であったハードウェアの価格高騰もあり,購入を様子見していることが原因となっている. 2021年度は後期から国内の旅費計上が行えると期待しており,その際に物品購入に関しても2020年度分に予定していた予算計上が行える予定である.また,もし渡航が行えない場合に関してはオンラインディスカッションのための物品や書籍等の購入に予算使途目的を変更することも考案している.
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