研究課題/領域番号 |
20K19745
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
深作 亮也 九州大学, 数理学研究院, 助教 (40778924)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 限量子消去 / ホップ分岐 |
研究実績の概要 |
本年度は本研究課題「実計算代数手法に関する効率化と数理科学分野への応用」のための研究として、ホップ分岐への応用研究を行なった。ホップ分岐は力学系における局所的な分岐の一つであり、安定もしくは不安定なリミットサイクルの誕生もしくは消滅を特徴付けるような分岐である。また、ただ一つの安定もしくは不安定なリミットサイクルが誕生もしくは消滅する場合は単純ホップ分岐と呼ばれ、そうでない場合は重複ホップ分岐と呼ばれる。単純ホップ分岐に関する「安定もしくは不安定」や「誕生もしくは消滅」については 2020 年に Kruff と Walcher によって提案された手法で完璧に判定することができる。そして、本研究課題では、彼らの手法を拡張することで、重複ホップ分岐を特徴付けるような手法を提案し、日本数式処理学会第29回大会で発表した。 本研究課題で提案されたこの手法は「行列演算などのような線形代数手法」や「限量子消去などのような実計算代数手法」を利用することで、重複ホップ分岐の発生を特徴付けることができる。そして、この手法は計算代数システム SageMath 上に実装され、具体的な入力たちに対する原点におけるホップ分岐の発生をパラメータだけで特徴付けることもできる。計算代数システム Maple 上で動作する限量子消去パッケージ「CGSQE」は等式制約の多い一階述語論理式を効率的に処理できるが、重複ホップ分岐のための実装ではそのパッケージ CGSQE を呼び出すこともできる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Kruff と Walcher によって提案された単純ホップ分岐のための手法を重複ホップ分岐のために拡張でき、その成果を日本数式処理学会第29回大会で発表できたためである。また、計算代数システム SageMath に実装もできたため、本研究課題はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
重複ホップ分岐については詳細な振る舞い (リミットサイクルが誕生するか消滅するかなど) も特徴付けることができる手法に拡張したいと考えている。また、代数解析などへの計算代数手法の応用にも取り組みたいと考えているが、まずは多くの研究成果も達成されている複素解析への計算代数手法の応用に取り組んだ上で、実解析への計算代数手法の応用に取り組みたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス蔓延防止のため、申請時に計画していた出張などができない状態にあった。次年度以降もこうした状況が続きそうな場合は、遠隔会議のための設備を充実させたいと考えている。また、初年度に購入する予定であった計算サーバーについては、大規模な実験が必要となってくる次年度以降に購入したいと考えている。
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