研究課題/領域番号 |
20K19745
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
深作 亮也 九州大学, 数理学研究院, 助教 (40778924)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 計算代数 / 数式処理 / 限量子消去 |
研究実績の概要 |
2021年度は主に以下に関連した研究において進歩が得られた: (a) ポアンカレ・アンドロノフ・ホップ分岐の重複度に基づいた分類アルゴリズム (b) 一変数有理関数の留数計算アルゴリズム
(a) について: ポアンカレ・アンドロノフ・ホップ分岐は、パラメータに依存した常微分方程式系の固定点から発生するもしくは消滅するリミットサイクルに関連するような、力学系における局所的な分岐であるが、そのリミットサイクルの個数の上限を重複度と呼ばれる概念によって特徴付けることができる。2021年度は、固定した重複度を持つポアンカレ・アンドロノフ・ホップ分岐が現れる必要条件を計算するためのアルゴリズムをまとめた論文が国際会議 The International Symposium on Symbolic and Algebraic Computation (ISSAC) から受理され、その成果を2021年7月にハイブリッド形式で開催された ISSAC で発表できた。 (b) について: 留数は孤立特異点を囲む経路に沿う有理型関数の複素線積分から得られる複素数であるが、実軸上での積分に応用できたりなどと、非常に有用な概念でもある。しかしながら、位数が高い場合などに留数を効率的に計算することは決して簡単なことではない。2021年度は留数計算に関する既存研究を調査し、そして、共同研究者とともに新しいアルゴリズムを提案することができた。この成果を国内の研究集会で2021年12月に発表できたので、2022年度は論文として投稿したいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は実計算代数手法の効率化と数理科学分野への応用を目指しているが、前年度に引き続き応用研究で成果をあげることができ、実計算代数手法の効率化も幅広く着実に進んでいると考えている。特に、力学系の分岐に実計算代数手法の一つである限量子消去を応用した成果をまとめた論文は2021年度に国際会議にも受理されており、本研究課題は現時点ではおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
実計算代数手法の効率化と数理科学分野への応用のため、以下の研究を今後推進していきたいと考えている: (1) 一変数有理関数の留数を効率的に計算するためのアルゴリズムをまとめた論文を2022年度に投稿する。 (2) 代表者が開発している限量子消去パッケージでは包括的グレブナー基底系と呼ばれる概念を用いているが、それを計算するときに得られる表現を簡素化したい。限量子消去の出力も簡素化されることが期待されるが、限量子消去の計算自体の効率化も期待できると考えている。 (3) 実計算代数手法の統計分野などへの応用も目指していきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ蔓延防止のため、今年度まで対面での国内研究集会・国際会議への参加ができなかったため、次年度使用額が生じている。
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