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2022 年度 実施状況報告書

実計算代数手法に関する効率化と数理科学分野への応用

研究課題

研究課題/領域番号 20K19745
研究機関九州大学

研究代表者

深作 亮也  九州大学, 数理学研究院, 助教 (40778924)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワード代数計算 / 一変数留数計算 / グレブナー基底 / 因子分析モデル
研究実績の概要

2022年度は主に以下に関連した研究において進歩が得られた:
(a) 一変数有理関数の留数計算アルゴリズム
(b) 因子分析モデルへの計算代数手法の応用

(a) について:2021年度に調査した留数計算に関する先行研究や、共同研究者とともに開発した新しいアルゴリズムをもとに論文を投稿した。特に、この論文では、既存のアルゴリズムと新しいアルゴリズムを Risa/Asir と SageMath という二つの数式処理システムに実装し、アルゴリズムの性能を比較している。この比較によって、既存のアルゴリズムと新しいアルゴリズムにおける各々の利点が整理できたと考えている。
(b) について:因子分析モデルは共通因子・独自因子と呼ばれる潜在変数を含む数理統計モデルであり、多変量データの背後にある原因を探し出すために用いられる。特に、心理学・マーケティング・生命科学・パターン認識などにも応用されており、非常に重要な数理統計モデルである。しかしながら、零以下の独自分散が最尤法で算出されてしまうという、不適解問題と呼ばれる計算課題がある。2022年度は、共同研究者らとともに、モンテカルロシミュレーションによって、計算代数手法に基づく厳密な最尤推定量の候補の算出を行なった。この計算実験では観測変数・因子の個数が比較的小さいものを扱っているが、不適解問題の原因に少なからず近づくことができたと考えている。なお、この研究結果の一部については国内の研究集会で2022年度に発表したが、より詳細な結果を2023年度に論文投稿・国際会議発表などを通して発信していく。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究は実計算代数手法の効率化と数理科学分野への応用を目指しているが、前年度に引き続き、基礎研究・応用研究で成果をあげることができ、着実に研究が進んでいるものと考えている。特に、本研究で開発した一変数留数計算アルゴリズムは非常に高速であり、とても大きな位数の留数さえも効率的に計算することができる。また、2022年度は数理統計分野への応用にも着手することができ、応用研究の幅が着実に拡がってきている。そして、その応用では比較的大きな計算資源(メモリ・時間)が必要になるが、計算資源の節約を如何に行うかという観点から、こうした応用研究では応用先の問題を解くということだけに留まらず、代数計算の効率化にも寄与している。

今後の研究の推進方策

以下の研究を今後推進する:
(1) 代表者が開発している限量子消去パッケージを非商用ソフトウェアの下で開発する。また、理論的な面からは、そのアルゴリズムの背後で用いている包括的グレブナー基底系の表現を簡素化したい。限量子消去の出力も簡素化されることが期待されるが、限量子消去の計算自体の効率化も期待できるため、非常に重要であると考えている。
(2) 数理統計分野への代数計算の応用を2022年度と同様に推進していく。 特に、不適解問題のような数理統計解析手法に潜む計算課題に対する解明の糸口を、代数計算による厳密な計算やパラメータ制約の計算を有効活用することで、探っていきたいと考えている。そして、そのためには、計算資源(メモリ・時間)の節約が非常に重要になると考えている。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウィルス (COVID-19) 蔓延防止のため、国際会議についてはオンライン参加したことが最も大きな理由である。なお、2023年度は、国際情勢を見極めながらではあるが、国際会議にも現地参加することを検討している。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2022

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] 因子分析へのグレブナー基底に基づくアプローチ2022

    • 著者名/発表者名
      深作亮也, 廣瀬慧, 加葉田雄太朗, 寺本圭佑
    • 学会等名
      RIMS共同研究(公開型)「Computer Algebra - Foundations and Applications 」
  • [学会発表] 効率的な一変数留数計算アルゴリズム2022

    • 著者名/発表者名
      深作亮也, 田島慎一
    • 学会等名
      日本数学会

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公開日: 2023-12-25  

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